1. はじめに
「次は魚醤を作ってみたいです。」「どの魚がおすすめですか?」
わが家では味噌や豆板醤など、不定期で発酵食のワークショップを開催しているのですが、
参加者の多くが置いてある甕(かめ)の多さに驚きつつも、魚醤への興味を口にします。
実際魚醤を使ったことがある人はと聞くと、ほとんどいません。
スーパーにもタイのナンプラーは置いてあっても、日本の魚醤を見かけることはほとんどありません。
ましてや料理に合わせて数種類使い分けている人なんて、それを生業としている料理研究家くらいでしょう。
魚醤はどの家庭でも作ることができます。
ただ数年前に一世を風靡した塩麹とは違います。
塩麹の材料は「麹と塩と水」、そこにに変数はほぼありません。
その点魚醤は、ありとあらゆる魚種から選ぶことができます。
そこではじめて迷いが生じます。
「いったいどの魚を仕込んだらいいのか。」
わが家も最初は迷いました。
迷った末に最初の1本に選んだのは、定番のカタクチイワシでした。
そこからアジ、ホウボウ、ハタハタ、ヒラメ、カレイ、マトウダイ、イカ、スズキ、キビナゴ、花鯛、クロダイ、マイワシなどなど、ここに書ききれない多種類を仕込み、
今まさに青魚史上最難関のサバに挑戦しているところです。
その数7年で数十種類。
手に入る魚を興味の赴くままに仕込んできましたが、振り返ってみると、
どの順番で経験を積むかで、上達のスピードがかなり変わるように感じます。
最初に難しい魚を選んで失敗すると、「やっぱり自分には無理だ」と挫折します。
でも最初の1本がうまくいくと、どうでしょう。
「次はあの魚で作ってみたい」と味を想像して次の目標をみつけたり、
「この魚は魚醤に向いているかな」と直売所や市場での魚の見方が変わったり、
自分でも不思議なくらい興味が湧いてくるのです。
この記事では、代表的な7つの魚種(キビナゴ、アジ、スズキ、花鯛、マイワシ、サバ、クロダイ)を例に、
「どのレベルの人に向いているか」と「どんな料理に使いたいか」の2つの軸で整理して、
あなたに合った最初の1本を見つけるお手伝いをします。
この記事でわかること
✔ 初心者・中級者・上級者、それぞれにおすすめの魚種
✔ 「どんな料理に使いたいか」から逆算する魚の選び方
✔ 経験を積むのに効率的な順番(ロードマップ)
2. 結論:迷ったらキビナゴかスズキから
細かい比較の前に、まず結論です。
初めての魚醤は、キビナゴかスズキがおすすめです。
その理由は3つあります。
✔ 下処理が楽(キビナゴは丸ごと仕込めます)
✔ 失敗しにくい(どちらも脂やけ・ヒスタミンのリスクが低い)
✔ 臭いが少ない(家族に嫌がられにくい)
もしあなたが魚を捌いたことが一度もなかったら、より手軽に始められるキビナゴをおすすめします。
逆に家に出刃包丁や刺身包丁があるくらい大型魚に慣れているなら、仕組みを理解しながら丁寧に仕込むことができるスズキが最適です。
唯一、手軽に手に入る魚種ではないという難点はあります。
ただ新鮮な状態で手に入るなら、仕込まない手はありません。
3. 魚を選ぶときに考える3つの軸
軸1:下処理の手間
魚醤づくりで一番大変なのは、仕込み当日の下処理です。
購入したら即仕込みが鉄則、眠いから明日にしようかな、は通用しません。
魚醤成功の鍵は「迅速かつ丁寧な下処理」、これに尽きます。
キビナゴのように体が小さい魚は、丸ごと塩水で洗って漬けるだけです。
一方のスズキのような大型魚はエラ取って丁寧に血抜きをした上で、適切な大きさにカットする必要があります。
4キロのスズキともなると、処理に慣れているわが家の主人でも、ノンストップで40分くらいかかります。
その他青魚最難関のサバの場合には、冷塩水での30分の血抜きとラップを使った酸素遮断を行うなど、
魚の特徴に合わせてやるべき工程が増えることがあります。
魚醤は魚と塩を甕に詰めるだけのようにもみえます。
たまたまできることもあるでしょう。
ですが何も学ばずに進み続けると、その先に待ち受けている数々の試練に太刀打ちできません。
「自分は今どこまでなら手間をかけられるか」をよく考えて、魚を選んでください。
軸2:失敗のリスク
魚醤の失敗の代表的なものに、脂やけ(脂の酸化で臭くなる) と ヒスタミン(食中毒の原因物質)の発生があげられます。
軽度の脂やけは最終的に除去できる可能性もありますが、ヒスタミンの発生は即廃棄を意味します。
白身魚は脂もヒスチジン(ヒスタミンの元)も少ないので、どちらのリスクも低いのです。
一方の青魚は両方とも多いので、より管理の丁寧さが求められます。
特にサバはヒスチジンが白身魚の10〜20倍と、少しでも鮮度に疑問があったら仕込んではいけない魚です。
失敗したくない、もしくは過去に失敗した経験がある場合は、白身魚からのチャレンジをおすすめします。
軸3:どんな料理に使いたいか
ここが一番大切なポイントです。
魚醤をつくる目的は「料理に使うこと」、完成して満足ではありません。
どんな料理に使いたいかによって、選ぶべき魚が変わります。
| 使いたい料理 | 向いている魚醤のタイプ | おすすめ魚種 |
|---|---|---|
| お吸い物・茶碗蒸し・おひたし | クリアで透明感のある旨味 | スズキ・花鯛 |
| 卵焼き・だし巻き・白身魚の煮付け | 甘みとまろやかさのある旨味 | キビナゴ・花鯛 |
| ドレッシング・カルパッチョ・冷製パスタ | 繊細で素材を邪魔しない旨味 | スズキ |
| 味噌汁・豚汁の隠し味 | 幅広く使える万能な旨味 | アジ |
| カレー・トマト煮込み・ミートソース | コクと深みのある旨味 | アジ・マイワシ |
| 炒めもの・焼きそば・ラーメンのタレ | パンチのある旨味 | アジ・マイワシ |
| 餃子のタレ・焼肉のつけダレ | 少量で効く力強い旨味 | マイワシ |
| 魚介のパスタ・アクアパッツァ | 磯の香りが活きる個性的な旨味 | クロダイ |
「毎日の和食に使いたい」ならスズキか花鯛、
「カレーや炒めものに使いたい」ならアジが最初の1本に向いています。
4. 初心者におすすめ:キビナゴとスズキ
キビナゴ:「手軽さ」で選ぶ最初の1本
こんな方に向いています
✔ 一番シンプルな工程の魚種から始めたい
✔ 下処理に時間がかけられない
✔ できるだけ早く魚醤を完成させたい
キビナゴの特徴
体長5〜10cmの小さな青魚。
丸ごと仕込めるので、エラや内臓を個別に取り出す必要がありません。
塩水で洗って、塩と交互に重ねて漬け込むだけ。
仕込み作業は30分もかからないのが最大の魅力です。
青魚ですが脂質は比較的控えめで、匂いも穏やかです。
「青魚なのに白身魚みたいにやさしい仕上がりになる」というのが、キビナゴの面白いところです。
仕上がりの味と料理への活用
甘みを帯びた、まろやかな旨味。
後味がやさしく、素材の味を邪魔しません。
✔ 玉子焼き・だし巻き ── 溶いた卵に少量混ぜるだけ。甘みが加わって、いつもの玉子焼きがワンランクアップ。
✔ お味噌汁 ── だしの素の代わりに。やさしい旨味がじんわり広がり、味噌だけよりも上品な味わいに。
✔ 白ご飯 ── ご飯を炊く時に数滴加えると、ほんのりとした香りと優しい旨味でご飯がすすむ。
✔ ドレッシング ── オリーブオイル+酢+キビナゴ魚醤+黒こしょうで、さっぱりとしたドレッシングに。
スズキ:「学び」を大切にした方におすすめ
こんな方に向いています
✔ 魚醤の仕組みを理解しながら作りたい
✔ 各工程の「なぜそうするか」を知りたい
✔ 料理が好きで、和食中心の食生活を送っている
スズキの特徴
体長50〜80cmの大型白身魚。
血抜き・エラ取り・内臓処理・輪切りと、魚醤作りの基本工程をひと通り経験できます。
「なぜ血を抜くのか」「なぜ輪切りにするのか」、
各部位が大きく分かりやすいので、作業もしやすく納得しながら進むことができます。
脂質が1〜3%と少なくヒスチジンも低いため、リスク管理に神経を使わずに「正しい手順を学ぶこと」に集中できるのが最大のメリットです。
仕上がりの味と料理への活用
クリアで透明感のある旨味。
雑味がなく、料理の素材を引き立てる「縁の下の力持ち」になること間違いなしの1本。
✔ お吸い物 ── ハマグリのお吸い物も、塩だけよりも旨味が倍増し、透明感のある上品な一椀に。
✔ 茶碗蒸し ── 醤油の代わりに。卵の甘みとスズキの旨味がなめらかに溶け合い、料亭の味が再現できる。
✔ 白身魚のカルパッチョ ── オリーブオイルとレモンに数滴加えるだけで、繊細な味わいのソースに。
✔ 冷製パスタ ── トマトとバジルにスズキ魚醤を合わせると、ほんのりとした魚介の香りとしっかりとした塩味で上品な仕上がりに。
→▶︎もったいないなんて言わせない、丸ごと1匹で仕込む『スズキの魚醤』の作り方
5. 中級者へのステップアップ:アジ・花鯛・クロダイ
はじめての1本を成功させたら、次はこの3種に挑戦してみてください。
アジ:「万能選手」を手に入れる
こんな方に向いています
✔ 青魚の魚醤を本格的に作ってみたい
✔ 和食にも洋食にも使える万能な1本が欲しい
✔ ナンプラーは好きだけど、もう少し臭みがマイルドでもいいなと思っている方
アジの特徴
キビナゴより体が大きい(15〜25cm)ため、輪切り・エラ取り・血抜きが加わります。
脂質は5〜10%で、白身魚よりも脂やけのリスクはあるものの、生息域が広いため新鮮な個体が手に入りやすいです。
塩分比率は3:1とキビナゴと同じですが、下処理の丁寧さが仕上がりに直結するのが体感できます。
仕上がりの味と料理への活用
力強くバランスの良い旨味の「万能選手」。
一般的なカタクチイワシの魚醤に一番近い味わいながら、個体の大きいので出来上がりの量も多いです。
わが家では一番使用頻度が高い魚醤です。
✔ カレー ── 煮込みの仕上げに小さじ1杯。コクが一段深くなり、本格的な味わいに。
✔ 味噌汁・豚汁 ── 煮干しだしの代わりに。けんちん汁や酒粕汁は味噌とアジの魚醤半々入れると美味しく仕上がる。
✔ 炒めもの全般 ── 野菜炒め、焼きそば、チャーハン、何にでも。オイスターソースと魚醤は相性抜群。
✔ ミートソース・トマト煮込み ── トマトの酸味とアジの旨味が絶妙に合う。隠し味ではあるものの、ちょっと多めに加えるのが吉。
✔ ガパオライス ── ナンプラーの臭みが苦手な方にも、アジの魚醤の香りはちょうどいい。エスニック料理のアクセントに。
花鯛:「白身魚のバリエーション」を広げる
こんな方に向いています
✔ スズキの次のステップに、「他の白身魚ではどう違うのか」を体験できる
✔ 甘みのある上品な1本を手に入れたい
✔ スーパーでよく花鯛と遭遇する方
花鯛の特徴
マダイと同じタイ科の白身魚で、体長20〜35cm。
スズキより小ぶりで複数匹仕込めるため、個体差がブレンドされて味が安定しやすいのがメリットです。
スズキより身が柔らかく発酵がやや速いため、完成を待つ時間もスズキより短めです。
仕上がりの味と料理への活用
甘みを帯びた、まろやかな旨味。
スズキのクリアさとは違う「やさしい甘み」が特徴です。
✔ だし巻き卵 ── 甘めのだし巻きとの相性が抜群。だしの効いた関西風に仕上がる。
✔ 白身魚の煮付け ── 仕上げに小さじ半分。魚の旨味が二重に重なって深みが出る。
✔ おひたし ── ほうれん草や小松菜のおひたしに。繊細な甘みが野菜を引き立てる。
✔ 和風パスタ ── バターと花鯛魚醤で和えるだけ。バター醤油よりもあっさりとした口当たりで、こってりとした味付けが苦手な方にもおすすめ。
クロダイ:「磯の香り」と向き合う
こんな方に向いています
✔ 個性的な魚醤を作ってみたい
✔ 釣りでクロダイが手に入る
✔ クセの強い食べ物が好き
クロダイの特徴
マダイや花鯛と同じタイ科ですが、内湾や河口に住む雑食性のため、個体によって「磯臭さ」を持つことがあります。
この磯臭さは、うまく発酵させれば「スモーキーで複雑な香り」として旨味に統合されますが、失敗すると「ただの臭み」になります。
「どの個体を選ぶか」が仕上がりの8割を決めるという、素材選びの重要さを身をもって学べる魚種です。
塩水での長めの血抜き(30分〜1時間)と消化管の丁寧な洗浄がクロダイ固有の工程です。
仕上がりの味と料理への活用
力強い旨味に、磯の香りが重なった個性的な味わいで、他の白身魚では出せない「海を感じる旨味」です。
✔ 魚介のパスタ(ボンゴレ・ペスカトーレ) ── 磯の風味がアサリやイカの旨味と合流して、本場の味を再現できる。
✔ アクアパッツァ ── 煮汁にクロダイ魚醤を加えると、単調な味わいから一気に複雑味が増す。
✔ 魚介の味噌汁 ── あさりやしじみの味噌汁に数滴。磯の深みがぐっと増す。
✔ ブイヤベース ── 仕上げに大さじ半分加えると、洋風の魚介スープに和の旨味が溶け込む。
6. 上級者への挑戦:マイワシ・サバ
ここからは「不向きと言われる素材にあえて挑む」、挑戦者向けの魚種です。
経験なしにいきなり挑むのは無謀です。
マイワシ:「脂やけとの長期戦」を乗り越える
こんな方に向いています
✔ アジや他の青魚で脂の管理を経験済み
✔ カタクチイワシにはないコクのある魚醤を目指したい
✔ 2年待つ覚悟がある
マイワシの特徴
脂質が高く(旬は20%超)、長期発酵で脂やけしやすい魚醤には「不向き」とされる魚です。
わが家では春先の脂が控えめな個体を選び仕込みましたが、夏に脂やけの兆候が出て追い塩をしました。
その結果、発酵が遅くなり完成まで2年かかりました。
収穫時に残っていたかすかな脂やけ臭は、三段階の濾過で除去でき、最終的にクリーンな仕上がりになりました。
仕上がりの味と料理への活用
幅のある、重心の低い旨味で、色もブランデー越えの濃さに。
後味の余韻が長く、料理に「深み」と「パンチ」を加えます。
追い塩の影響で塩気がやや強めなので、使う量は少なめがおすすめです。
クセの強さとしては、アジの魚醤<マイワシの魚醤<ナンプラーといったところです。
✔ カレー ── 煮込みの最後に小さじ半分。少量でもコクが別次元に深まる。
✔ ミートソース・ボロネーゼ ── ひき肉の旨味にマイワシの旨味が重なり、プロ顔負けの味わいに。
✔ ラーメンのタレ ── 豚骨や鶏ガラスープに数滴。手軽にWスープが完成。
✔ 生春巻きのタレ ── 魚介の生春巻きとの相性が抜群。野菜はパクチーがおすすめ。
→不向きと言われたマイワシで2年『マイワシの魚醤』仕込みから収穫まで
サバ:「青魚史上最難関」に挑む
こんな方に向いています
✔ アジ・マイワシ・サンマ等で脂多めの魚醤を既にクリアした方
✔ 全魚種中で最も複雑な香りの魚醤に挑戦したい
✔ ヒスタミンと脂質酸化の同時発生リスクを理解している
サバの特徴
ヒスチジンが白身魚の10〜20倍、脂質は旬に20%超。
「最高の旨味ポテンシャル」と「最大のリスク」が同居する唯一の素材です。
当日水揚げの鮮度が絶対条件。
冷塩水(4〜8℃)で20〜30分の血抜き、仕込み初日からのラップ密閉、撹拌は初期は毎日と、
他の魚種にはない強化すべき工程が多々あります。
わが家では春の脂控えめなサバで仕込みました。
うまくいけば秋の旬サバでの本仕込みも行う予定です。
まだ熟成が不十分なため、味の評価は予想段階です。
期待する味わいと料理への活用(予想)
うまくいけば、アジやマイワシを超える複雑で豊かな醸造香を持つ魚醤になると思います。
脂質由来の深いコクが加わることで、他のどの魚醤にもない奥行きが期待できます。
✔ 本格カレー(スパイスから作る場合) ── スパイスの複雑さにサバの複雑さが重なる。期待大
✔ 煮込みハンバーグ・デミグラスソース ── コクのある洋風煮込み料理に合うはず
✔ ラーメン(特に魚介系) ── 魚介系スープの旨味をもうひと押しする存在になるのでは
7.「どの順番で経験を積むか」ロードマップ
あなたのスタイルに合わせて、3つのルートを提案します。
ルートA:手軽さ重視(青魚を軸に)
キビナゴ → アジ → マイワシ → サバ
丸ごと仕込みから始めて、輪切り・臓器処理へステップアップ。
青魚の脂の管理スキルを段階的に積み上げていくルートです。
ナンプラーのようにクセのある魚醤が好きな方に特におすすめです。
ルートB:学び重視(白身魚→青魚へ)
スズキ → 花鯛 → クロダイ → アジ → サバ
白身魚で基礎(血抜き・輪切り・臓器処理)を固めてから、青魚に進むルートです。
各工程の「なぜそうするか」を理解しながら進みたい方向けです。
釣りが趣味で、色々な種類の魚が手にはいる方に特におすすめです。
クロダイで「素材の個性と向き合う」経験を積んでからアジに行くと、
脂の管理の意味がより深く理解できます。
ルートC:いいとこ取り(白身と青魚を同時に)
キビナゴとスズキを同時に仕込む → アジ → 好きな魚種へ
白身魚と青魚を最短で両方体験できるルートです。
同時に2本仕込むことで、「白身魚と青魚の発酵の違い」を比較しながら学べます。
同じ塩、同じ甕、同じ時期に仕込んで「魚の違いだけ」を観察する──
テイスティング記事で紹介した「味わいの地図」に自分の魚醤を当てはめる楽しみも倍増します。
→テイスティングの方法はこちら
8. 7魚種の早見表
| キビナゴ | スズキ | 花鯛 | アジ | クロダイ | マイワシ | サバ | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| レベル | 初心者 | 初心者 | 中級者 | 中級者 | 中級者 | 上級者 | 上級者 |
| 下処理の手間 | ★☆☆ | ★★☆ | ★★☆ | ★★☆ | ★★★ | ★★☆ | ★★★ |
| 失敗リスク | 低 | 低 | 低 | 中 | 中 | 高 | 最高 |
| 塩分比率 | 3:1 | 4:1〜5:1 | 4:1〜5:1 | 3:1 | 4:1 | 3:1 | 2.5:1〜3:1 |
| 熟成期間 | 1〜1.5年 | 1.5〜2年 | 1〜1.5年 | 1〜1.5年 | 1.5〜2年 | 2年 | 1〜1.5年 |
| 旨味の性格 | 甘み・まろやか | クリア・透明感 | 甘み・上品 | 力強い・万能 | 磯香・個性的 | パンチ・余韻長い | 複雑・濃厚(予想) |
| 得意な料理 | 卵焼き・味噌汁 | 吸い物・カルパッチョ | だし巻き・おひたし | カレー・炒めもの | 魚介パスタ | ラーメン・煮込み | 本格カレー(予想) |
| 入手しやすさ | △(地域差) | △(直売所) | ○ | ◎ | ○(釣り) | ◎ | ◎ |
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9. よくある質問
Q. スーパーの切り身でも作れますか?
作れます。ただし骨や皮がついている状態が理想です。
骨からはミネラルやコラーゲンが溶け出して旨味に貢献しますし、
皮もコクの元になる成分を供給してくれます。
刺身用のサク(皮なし・骨なし)だと、仕上がりの旨味が薄くなるので、避けた方がいいでしょう。
切り身の場合は、できるだけ「アラ」も一緒に漬け込むのがコツです。
Q. 冷凍の魚でも作れますか?
作れますが、鮮度の良い生魚の方がベストです。
あえて冷凍を選択するのは得策ではありません。
冷凍すると魚の組織が若干壊れて、酵素の一部が変性します。
どうしても冷凍魚を使う場合は、冷蔵でゆっくり解凍(4〜8℃・12〜24時間)してから仕込んでください。
Q. 数種類の魚を同じ甕に仕込んでも大丈夫?
できないことはありませんが、おすすめはしません。
魚は脂の状態、発酵のスピード、身の大きさ、全てに違いがあります。
どの段階で注意が必要かも魚によって異なりますので、より手間が掛かります。
それぞれ単体で仕込んで、出来上がった後に混ぜるくらいが良いでしょう。
Q. なにをもって失敗と判断するか?
失敗は臭いで判断するのが一番分かりやすい方法です。
蓋を開けたときにアンモニア臭や強い腐敗臭がする場合は、残念ですが廃棄してください。
ちなみに白い膜(産膜酵母)が張るのは失敗ではありません。
すくい取って塩を足せば大丈夫です。
あと一番注意しなければいけないのが、ヒスタミンによる食中毒です。
完成時のテイスティングの時に口の中に違和感があったり、痒みが出るようであれば、
それは残念ながら失敗と言わざる得ません。
変な臭いがしないから大丈夫とはなりません。
ヒスタミンは加熱によっても消滅することはありませんので、特にお子さんのいる家庭では大人が先に味見をするなど、細心の注意を払ってください。
次に仕込むときは、以下を見直してみてください。
✔ 塩の量は十分だったか → 塩分比率の記事
✔ 鮮度の良い魚を使ったか
✔ 初期の撹拌をサボっていなかったか
10. まとめ
魚醤の魚を選ぶ3つのポイント
✔ 迷ったらキビナゴかスズキから
手軽さのキビナゴ、学びのスズキ。どちらもリスクが低く、最初の成功体験を得やすい魚です。
✔ 「どんな料理に使いたいか」から逆算する
和食の繊細な旨味が欲しいなら白身魚(スズキ・花鯛)。
カレーや炒めもののパンチが欲しいなら青魚(アジ・マイワシ)。
魚醤は使ってこそ価値がある。
目的が明確なほど、仕上がりへの満足度が高くなります。
✔ 経験を積む順番を意識する
「サバが安かったからサバで」と、いきなり最難関のサバに挑戦するより、
キビナゴやスズキで基本を学んでから段階的に進む方が、
結果的に上達が速く、失敗による材料と時間の無駄も防げます。
どの魚で始めても、1本目の魚醤が完成したとき、必ず2本目を仕込みたくなります。
甕の蓋を開けて、琥珀色の液体を見たときの感動は、何年やっても変わりません。
千里の道も一歩から。
まずは1本、ぜひ挑戦してみてください。
これから始める方へ──道具を揃えましょう
魚醤づくりに必要な道具は多くはありません。
結果が出るまでに1年以上かかるからこそ、妥協はしたくない。
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一度揃えると、毎年仕込むのが楽しみになってきますよ。
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