濃厚で強いトマトを育てたい!有機JASでも見えないもの|仕込み畑②

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1. はじめに

突然ですが、トマトって何種類あるか知っていますか?

スーパーに並んでいるのは、大玉、中玉(ミディトマト)、ミニトマトの3パターン。

色は赤、形は丸型で味はフルーツのように甘い、大半がそうです。

 

実はトマトの種類って、野生種も含めると数千種類にも及びます。

中には毒のあって人間が食べられないトマトもあります。

私たちがトマトと呼んで実際に口にしていうるものは、その数千種類の中のほんの一部に過ぎないのです。

 

トマトの起源は南米アンデス山脈といわれています。

そこから海を渡って世界中に広まり、日本に来たのは江戸時代。

はじめは観賞用とされてたようで、食べるものとして栽培されるようになったのは明治以降と、比較的最近なんです。

 

日本では赤くて丸いトマトが主流ですが、世界にはさまざまなトマトがあります。

完熟しても緑色のままのトマトや、シマシマやレオパードのような動物柄をしたトマト、

ぶどうのようにフルーティな味わいのトマトや、そのまま食べるには酸味が強すぎるトマト、

ブルーベリーよりも小さいトマト、皮が厚く加熱しないと食べられないトマト、長期保存できるトマトまで、

色、形、大きさ、調理法も、トマトという同じカテゴリーにありながら、実体はまったく違うのです。

そしてそのほとんどは、スーパーでは決して手に入りません

もちろん種が手に入らないから栽培できない品種もたくさんあります。

でもそれだけではありません。

その理由を知ったとき、わが家の「育てたい」気持ちが、より一層強くなったのです。

 

この記事でわかること

✔ スーパーに並ばない味がある本当の理由
✔ 「買う安心」と「育てる安心」の違い
✔ 味噌を継ぐように、種を継ぐという選択

 

2. スーパーに並ばない味がある本当の理由

スーパーの野菜売り場、春夏秋冬いつ行ってもトマトは並んでいます。

そして大きさも形も揃っていて、品質にブレがありません。

買う側としては選びやすい。

トマト農家の熟練の技はすばらしい。

それにしても揃い過ぎている…と不思議に思ったことはありませんか?

その「揃っている」ことの裏側には、私たちには見えなくなっているものがあります。

 

スーパーに並ぶ野菜の多くは「F1品種」と呼ばれる一代交配種です。

大きさが均一で、形が揃っていて、流通に適している。

棚に並べたときに見栄えがよく、日持ちもする。

東京のスーパーにも、熊本や愛知のトマトが並ぶのもそれが理由です。

 

一方で、昔から種を継いで育てられてきた「在来種」や「固定種」と呼ばれる品種があります。

加賀野菜や京野菜のような伝統野菜もその中に含まれます。

形にばらつきがでやすかったり、大きさが不揃いだったり、棚持ちが悪いものもある。

だから商業流通の中では、自然と選ばれにくくなります。

 

道の駅のような直売所でもそれは同じです。

大企業だけでなく、個人で畑を切り盛りしているおかあさんたちも、在来種を選んで栽培している人は少ないのです。

以前千葉で有機農場を営んでいる方に、F1種と在来種について訊いたことがあるのですが、

彼曰く「自分の家で食べるんだったら在来種って選択もありだと思うけど、うちの畑ではやれないな。

そもそもどれがF1種でどれが在来種かなんて、気にしている人なんてほとんどいないよ。

うちのお客さんも甘いトマトが好きだし、レストランから指定されるのも、サラダ向きの色が鮮やかで形もきれいなもの。

それに種取り用に畑に枯れるまで残しておいたら、次の冬野菜の準備が遅れてしまう。

わざわざ種から育てる必要はない。苗は買えばいい。

色々考えると在来種は商売には向かないね。」と、専業農家が在来種を選ばない理由を教えてくれました。

 

では、在来種のトマトってどんな味がするのでしょうか。

それを一言で言い表すのは実はとても難しいのです。

それぞれが個性的な味わい、「甘い=美味しい」と期待する人に、「在来種のトマト、美味しいですよ」はおそらく通じません。

わが家の畑でも数種類の在来トマトを栽培していますが、今流行りの糖度の高いフルーツトマトとは明らかに違います。

大手の種メーカーは、バイオテクノロジーを駆使して、新品種の開発にしのぎを削っています。

それは「さらに甘いトマト」を求める消費者から多く、それを栽培したいと思う生産者が多いからです。

スーパーのトマト売り場は、その成果の現れなのです。

「流通に適した味」で最適化されていて、「面白い味」「個性的な味」は、そこからこぼれ落ちているのです。

味に個性があっても、流通に乗らなければ食卓には並ばない。

 

どうしても在来種のトマトが食べたければ、全国で数人いるかいないかの生産者を探すか、やはり自分で育てるしかないのです。

 

前回の記事で「プランターひとつから始められる」と書きましたが、そのプランターに蒔く種を在来種や固定種の種にするだけでいいんです。

スーパーでは絶対に出会えない味が、自分のベランダで育てられるのです。

前回の記事:菌活から土活へ|仕込み畑①

 

3. 「買う安心」と「育てる安心」──2つのトレーサビリティ

前回の記事で、野菜づくりに使われる土壌資材の安全性について触れましたが、ここでもう少し詳しく説明します。

 

「買う」ことで得られる安心

スーパーで野菜を選ぶとき、わたしたちが頼れる情報は限られています。

✔ 産地(国産か、県名まで)

✔ 有機JAS認証の有無

✔ 一部の認証マーク(特別栽培など)

 

これらは便利な目印ですし、わが家も参考にしています。

ただ、表示からわかるのは「大まかな方向性」であって、

「この野菜に何がどれだけ使われたか」の全容ではありません。

 

有機JASの制度が悪いという意味ではありません。

一定の基準を保証するという点で大きな価値があります。

 

農薬や化成肥料、もみ殻や鶏糞などについて、ここで詳しく触れることはしません。

 

「表示を読む」という行為で得られる安心には、構造的な限界がある、そう言いたいのです。

これは制度の問題というより、「買う側」という立場の限界です。

 

「育てる」ことで得られる安心

自分で育てると、この構造が変わります。

土に何を入れたか、いつ入れたか、どれだけ入れたか。

全部自分で把握できます。

 

魚醤を「魚と塩だけ」、味噌を「大豆と麹と塩だけ」で仕込むように、

自分の畑やプランターで育てた野菜は、「何で育ったか」が全部わかるようになるのです。

 

「買うトレーサビリティ」が表示ラベルで得られる情報だとすれば、

「育てるトレーサビリティ」は自分の手で得る情報です。

私たちが求める真のトレーサビリティがまさにそれです。

そして「中身を全部自分で把握できる安心感」は、一度知ると手放せなくなるのです。

 

4. 種つぎという選択──味噌を継ぐように、種を継ぐ

在来種や固定種には、F1品種にはない特徴があります。

自分で種を採って、翌年また播けること。

「どういうこと?どの野菜だって種は採れるんじゃないの?」と疑問に思ったかもしれません。

 

F1品種は一代限りのこと、採れた種を植えても同じような野菜にはならないのです。

そのため毎年種を買う必要があります。

 

そこが在来種や固定種は違います。

実から種を採って、乾燥させて、保存しておけば、翌年また同じ野菜を育てられる。

畑をリセットせず、自然に枯れるのを待てば、「こぼれ種」で育つ野菜も出てくるのです。

その種たちは世代を重ねるごとに、その土地の気候や土壌に少しずつ適応していきます。

農薬も肥料もいらない、雑草にだって負けない、そんな「わが家だけの特別な種」が畑にどんどん増えていくのです。

 

発酵食品と似ていると感じませんか?

ぬか床を毎日かき混ぜながら、自分の家の環境に合った菌のバランスを育てていく。

味噌は前の年の味噌で蓋をすると発酵がうまくいく。

ヨーグルトも天然酵母も、種菌はずっと継ぐことができます。

「継ぐ」ことで、少しずつ「自分のものになっていく」。

 

もちろん、最初から自家採種をする必要はありません。

まずは育ててみてほしいのです。

在来種や固定種の種は、通販でも購入することができる。

まずは「種を選んで播いてみる」、その一歩が大事なのです。

 

わが家の「タイムカプセル」

「種とりなんて面倒なことしないで、買えばいいじゃない」

はじめて種を蒔くとき、種とりができないときはそれでもいい。

でも、いつかは種とりをしてほしいと思うのです。

手をかけて育てて、畑に適応させ、どんどん強い種にしていく。

「今年のトマト、前よりずっと濃い味がするね」

そんな子供たちも驚くくらい濃厚な味わいのトマトを育てたい。

 

そして子どもたちが大人になったとき、親になったとき、「子どもの頃に食べたトマトが食べたいな」と思ったときにまだ種が手元に残っている──

そんな未来を想像すると、心がほんわり温かくなるのです。

 

私たちの想いは、発酵おやこを始めた理由はこちらにも書いています。

 

5. まとめ

「育てる」を選択した3つの理由

 

スーパーでは出会えない味がある

流通に最適化された品種の裏側で、面白い味が見えなくなっている。

在来種・固定種の種をプランターに播くだけで、その味が自分のベランダで穫れるようになります。

 

「育てるトレーサビリティ」は、発酵食品の安心感と同じ

表示ラベルで得られる安心には限界がある。

自分で育てれば、発酵食品の材料を全て把握できるように、何がどれだけ使われたか全部わかります。

 

種を継ぐことは、未来の食卓を作ること

在来種や固定種の種は、毎年採って翌年また播ける。

味噌を継ぐように、野菜の種を継ぐ。

その種が、いつか子どもたちの手に渡る日が来るかもしれません。

 

次の記事では、実際に「行動」していきます。

台所の副産物(貝殻・柑橘の皮・魚のアラ・野菜くず)が畑の栄養になる「循環農業」と、

子どもと一緒に育てる食育について、具体的にお伝えします。

 

▶︎ 次の記事:台所循環のすすめ──貝殻がトマトの栄養になるまで|仕込み畑③

 

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▶︎発酵おやこを始めた理由:子供のアレルギーと未来へのタイムカプセル

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