自家製魚醤完全マニュアル|魚と塩だけで作る、2つの基本ルート

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自家製魚醤完全マニュアル 魚醤とは(道具の紹介・マニュアル)

数年前の私は、まさか自分が魚醤を作ることになるなんて、想像もしていませんでした。

きっかけは、子どものアレルギーに悩む日々の中で出会った、小瓶に入った一滴の液体。

その味わいに衝撃を受けたのが、すべての始まりでした。

それから作り続けること7年。

仕込んだ魚醤は、数十種類になりました。

もちろん、毎回うまくいったわけではありません。

水分が上がらなかったり、変な匂いを出してしまったり。

数えきれない失敗を経験し、その一つひとつを乗り越えてきました。

だからこそ、自信を持って言えます。

魚醤づくりは、難しくありません。

ただ、魚にはいろんな種類があって、それぞれに合ったコツがある。

そのコツさえ一度覚えてしまえば、あとはどんな魚でも応用できます。

このマニュアルでは、魚醤づくりの全体像と基本の型を、

最後まで読めばひとりで仕込めるように、まるごとお伝えします。

ポイントは、魚醤の仕込みが、突き詰めると2つのルートに集約されるということ。

ルートA:丸ごと仕込む(小型〜中型の魚) ルートB:解体して仕込む(大型の魚)

この2つさえ押さえれば、ほとんどの魚で魚醤が作れます。

魚種ごとの細かい個性は各記事に譲りますが、

このマニュアルだけで、まず一本は必ず仕込めるように書きました。

「どの魚で作るか、まだ決めていない」という方は、先に選び方ガイドをどうぞ。

自家製魚醤の選び方完全ガイド|どの魚で作る?

 

このマニュアルでわかること

✔ 魚醤がなぜ魚と塩だけでできるのか(基礎)
✔ 丸ごと仕込む手順(ルートA)
✔ 解体して仕込む手順(ルートB)
✔ どちらのルートを選べばいいか


1. 基礎:魚醤は、魚と塩だけでできる

具体的な手順の前に、魚醤の仕組みを知っておくと、

各工程の「なぜ」がわかって失敗しにくくなります。

魚を塩に漬けると、2つのことが同時に起こります。

① 魚自身の酵素が、タンパク質を旨味に変える

魚の内臓や筋肉には、もともとタンパク質を分解する酵素があります。

これが時間をかけて、魚を旨味成分(アミノ酸)に変えていく。

② 塩が、腐敗を防ぐ

たっぷりの塩が腐敗菌の繁殖を抑え、その間にゆっくり発酵が進みます。

魚自身の酵素が旨味を作り、塩が腐敗を防ぐ。

この2つだけで、魚醤はできます。だから麹も保存料も要りません。

→もっと詳しく:魚醤とは?2000年の歴史を持つ”魚の醤油”

共通の基本ルール

どちらのルートでも共通する、土台のルールです。

塩の量:魚の重量に対して、青魚は多め(魚:塩=3:1)、白身魚は控えめ(4:1〜5:1)。 →詳しく:なぜ青魚は塩が多いの?魚醤の塩分比率

塩の種類:精製塩でも作れますが、ミネラルが発酵を助ける海塩がおすすめ。岩塩ではなく海塩を選ぶのが、わが家のこだわりです(理由はいずれ別の記事で詳しく)。

魚醤におすすめの海塩

容器:長期熟成には陶器の甕が安定。最初はガラス瓶でも可。

熟成期間:白身魚で1.5〜2年、青魚で1〜1.5年が目安。

道具をこれから揃える方は、専用の記事でまとめています。

→魚醤作りに欠かせない道具たち(近日公開予定)


2. ルートA:丸ごと仕込む(小型〜中型の魚)

キビナゴ、カタクチイワシ、小アジなど、手のひらサイズの魚は、

丸ごと塩に漬けるだけ。最も手軽で、初めての一本にぴったりのルートです。

ここではキビナゴを例に、手順を最後までお見せします。

水を切ったキビナゴ

STEP1|鮮度を確認する

✔ 体に光沢がある
✔ 目が澄んでいる
✔ エラが鮮やかな赤
✔ お腹がしっかりしている

魚醤の味は鮮度で決まります。当日水揚げ・当日仕込みが理想です。

STEP2|下処理(丸ごとなので簡単)

① 塩水(海水程度の濃さ)でやさしく洗い、表面の汚れとぬめりを落とします。

② ザルにあげて水気を切ります。

小型魚は、エラも内臓も取りません。 丸ごと使うのがルートAの最大の利点。

内臓に含まれる酵素も、まるごと発酵の力になります。

※下処理の詳しい考え方は魚のサイズ別・下処理のポイント(近日公開)へ。

STEP3|塩漬け

① 容器の底に塩をひとつかみ敷きます。

② 魚を並べ、塩を振る。これを交互に層にしていきます。

③ 一番上は、魚が隠れるくらい塩で厚めに覆います。

<失敗を防ぐコツ> 塩が一か所に偏ると、薄い部分から腐敗します。各層、全体にむらなく振ってください。

甕に詰めたキビナゴ

STEP4|重石をして待つ

① 液面を熊笹か経木で覆います(産膜酵母を防ぎます)。

② 押し蓋をのせ、重石をします。

③ 蓋をして冷暗所へ。

経木で表面を覆った魚醤

<失敗を防ぐコツ> 重石が軽いと水分(魚醤の素)が上がってきません。仕込み重量と同じくらいの重さをのせてください。数日で魚が液に浸れば順調です。

STEP5|ときどき混ぜる

最初の1か月は、3日に1回ほど、底からすくうように混ぜます。

塩を全体に行き渡らせ、腐敗を防ぐためです。

あとは時間に任せて、1〜1.5年。

STEP6|漉して収穫

液が澄んだ琥珀色になり、旨味がのったら完成です。

布やペーパーフィルターで漉して、固形物を取り除きます。

ペーパーフィルターで漉している魚醤

→完成の見極め方:魚醤のテイスティング 5つの軸

これがルートAの全工程です。 キビナゴなら、この通りに作れば必ず一本できます。

カタクチイワシで「和製ナンプラー」を作る場合も、基本はこのルートA。

カタクチイワシならではの個性(内臓の扱い・熟成の見極め)はこちらで深掘りしています。

和製ナンプラー『カタクチイワシの魚醤』の作り方


3. ルートB:解体して仕込む(大型の魚)

スズキ、タイ、ホウボウなど、30cmを超える大型魚は、

丸ごとでは中心まで塩が届かず、内側から腐敗してしまいます。

そこで、エラと内臓を取り、輪切りにして仕込みます。

手間はかかりますが、クリアで上品な魚醤になるのがルートB。

ここではスズキを例にします。

スズキ

STEP1|鮮度を確認する

ルートAと同じく、光沢・目・エラ・弾力をチェック。

大型魚は血抜きがされているとさらに良い仕上がりになります。

STEP2|下処理(ここがルートBの肝)

① ウロコを取ります。

② エラを取り除きます。エラは雑味と臭みの最大の原因なので必ず除去。

③ お腹を開いて内臓を出します。苦玉(胆のう)を潰さないよう注意。

④ 血合い(背骨沿いの赤い部分)を流水で洗い流します。鉄臭さの原因になります。

⑤ 大型魚は血抜きをすると、仕上がりがぐっとクリアになります。

※臓器ごとの細かい処理判断は魚のサイズ別・下処理のポイントへ。

内臓を取り除いたスズキ

STEP3|輪切りにする

胴を4〜6cmの輪切りにします。皮はつけたままでOK。

スズキを輪切りにする

<失敗を防ぐコツ> 厚すぎると中心まで塩が届かず、その部分だけ腐敗します。骨ごと断面を出すことで、塩の浸透が早まります。

STEP4|塩漬け

① 容器の底に塩を敷きます。

② 輪切りを並べ、断面に直接塩をすり込みます。表面に振るだけでは、厚い身の中心まで届きません。

塩をまぶしたスズキ

③ 層を重ね、最上段は塩で厚く覆います。

<失敗を防ぐコツ> 大型魚は身が厚いぶん、塩のすり込みが甘いと失敗します。断面と腹腔内に、しっかり塩を入れてください。

STEP5|重石をして待つ

ルートAと同じく、熊笹で覆い、押し蓋と重石をのせて冷暗所へ。

大型魚は骨で浮きやすいので、重石は仕込み重量の30〜50%を目安にしっかりめに。

STEP6|混ぜて、漉して収穫

最初の1か月は3日に1回混ぜ、あとは1.5〜2年熟成。

澄んだ琥珀色になったら、漉して完成です。

これがルートBの全工程です。 スズキで覚えれば、タイでもホウボウでも応用できます。

スズキならではの詳しい話はこちら。

白身魚の基準はこの一本『スズキの魚醤』の作り方


4. どちらのルートを選べばいい?

迷ったら、この早見表で。

魚のサイズ 代表的な魚 ルート 難易度
手のひらサイズ キビナゴ・カタクチイワシ・小アジ A(丸ごと) やさしい
中型 アジ・サバ・マイワシ A寄り(内臓処理は推奨) ふつう
大型(30cm〜) スズキ・タイ・ホウボウ B(解体) 手間がかかる

はじめての一本は、ルートAの丸ごと(キビナゴやカタクチイワシ)が断然おすすめです。

下処理がほとんどなく、失敗しにくい。

まずルートAで魚醤づくりの流れを体で覚えてから、

ルートBの解体に挑戦すると、すんなり進めます。


5. 応用編の地図:基本の先にある、魚醤の世界

基本の2ルートを覚えたら、その先には豊かな応用の世界が広がっています。

ここでは「こんな仕込み方もある」という地図だけお見せします。

詳しい手順は、それぞれの記事へ。

▼ 青魚で、脂のコクを引き出す 脂やけと向き合いながら、濃厚な旨味を狙う上級ルート。 →マイワシの魚醤(2年熟成) / サバの魚醤(青魚最高難度)

▼ 内臓を活かして、力強く仕込む 内臓ごと発酵させると、いしるのような濃厚な魚醤に。

▼ 硬い部位を、麹で分解する ホウボウの鳴き袋のような硬いコラーゲン質には、麹を少しだけ。 ※ただし身全体に麹を入れると魚の個性が消えます。 →魚醤に麹、ちょっと待って

▼ 魚以外の素材で作る イカの内臓(いしり)など、魚以外でも魚醤は作れます。

▼ 1匹で2品。アンチョビと魚醤を同時に 身はアンチョビ、アラは魚醤に。 →コラトゥーラ風魚醤とアンチョビの同時仕込み(近日公開)

応用の選び方は、こちらのガイドが地図になります。

魚醤づくり何からはじめる?7魚種から選ぶこだわりの1本


6. うまくいかないときは

魚醤づくりで、つまずきやすいポイントがあります。

このマニュアル通りに作れば、各STEPの「失敗を防ぐコツ」で、

ほとんどのトラブルは予防できます。

ですが、もし──

水分が上がってこない / 表面に白い膜が張った / カビかどうか判断できない / 濁ってきた / 嫌な臭いがする / 食べると口がかゆい

こうした症状が出たときは、原因と対処を専用の記事にまとめています。

→魚醤のトラブル解決ガイド(近日公開予定)

特に「食べると口やのどがかゆい」という症状は、

鮮度の落ちた魚で起きやすい体調トラブルにつながることがあります。

鮮度の良い魚を選び、塩をしっかり効かせることが最大の予防策です。

不安なときは無理をせず、廃棄する判断も大切にしてください。


7. まとめ

魚醤づくりは、2つのルートに集約される

ルートA(丸ごと):小型魚を塩漬けするだけ。初めての一本に最適。

ルートB(解体):大型魚はエラ・内臓を取り、輪切りに。クリアな味。

基本は「魚と塩だけ」。麹も保存料も要りません。

このマニュアル通りに作れば、まず一本は必ず仕込めます。

そして一本できたら、きっと次の魚で作りたくなる。

そのときは、魚種ごとの個性を深掘りした各記事が、あなたを待っています。

自家製魚醤の選び方完全ガイド

魚醤づくり何からはじめる?7魚種から選ぶこだわりの1本

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