1. はじめに
スーパーで野菜を手に取るたびに、ずっと気になっていたことがあります。
「このキャベツ、虫食いの穴がまったくないけど、どんな薬をどのくらい使ったんだろう」
「最近生産者の顔がわかる野菜が増えてきたけど、名前は書いてあっても栽培方法までは書かれていないものが多いよね」
「有機野菜って、農薬不使用とか化学肥料肥料不使用って書いてある野菜とどう違うのかな」
「子どもに食べさせるなら安全な野菜がいいけど、これはどうやって育てられたのかな」
このブログを読んでくださっている皆さんは、きっと食への関心が高い方でしょう。
私と似たようなことを感じたことがあるのではないでしょうか。
私自身ずっとモヤモヤしていたのですが、それがようやく晴れようとしています。
その答えは、私たちが長年続けてきた発酵食づくりにありました。
この記事でわかること
✔ 市販の野菜について、わが家の考え
✔ 畑の土を育てることと腸を整えることは、実は密接に関係している
✔ 発酵の知識がある人は、野菜づくりのハードルが低い⁉
2. 市販の野菜について、わが家の考え
はじめに断っておきますが、市販の野菜がすべて悪いという話ではありません。
わが家もスーパーにも行きますし、遠出をすれば道の駅などの直売所にも寄って帰ります。
それはなぜか、畑には端境期(はざかいき)という期間があります。
端境期とは収穫から次の収穫までの期間を指し、その間収穫できる野菜はほとんどありません。
春に種をまき、夏に収穫するトマトやトウモロコシなどの夏野菜、
秋に種をまき、冬に収穫する大根やカブ、ニンジンなどの冬野菜、
畑のように温度管理をせずに自然のままに育つ露地栽培の野菜は、旬の時期が限定されます。
春はどうなのかというと、そら豆やグリンピースの他は、時期をずらしてまいたカブなどの間引き菜があるくらいです。
秋は比較的シーズンの長いかぼちゃや唐辛子が残っているくらいで、冬が本番の大根やカブの間引き菜まで待つことになります。
そんな感じなので、わが家も端境期には市販の野菜にお世話になります。
ただ「材料の中身をすべて把握できている」ことの安心感を、私たちは発酵食品を作る生活から実感しています。
味噌は大豆と麹と塩、魚醤は魚と塩。
発酵調味料の多くは、シンプルな材料で作ることができます。
でも市販品の成分表示をみるとどうでしょう。
味噌には酒精が入り、魚醤には砂糖や小麦が入ることがあります。
昔ながらの発酵食品だから大丈夫と安心しきっていると、そこが盲点になりがちです。
どうして味噌に酒精を入れるのか、味噌を手作りしたことがある方はわかると思いますが、
味噌の色は発酵し続けることでメイラード反応がすすみ、数か月かけて徐々に濃い茶色に変化していきます。
もしそれが市販の味噌で、しかも賞味期限内に起こったら、その変化に驚き返品をしたいと申し出てくる人もいるかもしれません。
そんなことになったら、小さなメーカにとっては大打撃です。
品質を安定させる以外にも、発酵をより短期間で効率的にすすめるために加えられている添加物が多いのも事実です。
それを畑に置き換えてみると、品質の安定のために農薬を使い、
短期間で効率的に育てるために化成肥料を使う。
虫食いも葉のいたみもない、きれいで大きなキャベツを求める人もいるでしょう。
虫が一匹でも発見されたら全クラス回収しなければいけない給食も、行列の絶えない飲食店も、
きれいな野菜の方が効率がいいのです。
でも私が家で子供と一緒に食べたいキャベツは、
虫食いがあっても、小さくても、葉がうまく巻いてなくてリーフレタスのような外見でも、
さっと洗ってそのまま生でかじりつきたくなる、そんな決してお店には並ばないキャベツなのです。
安心安全の代名詞でもある有機野菜も、農薬を全く使っていないわけではありません。
それにどんな土壌資材を使ったのかも、わかりません。
「買う」という行為で得られる安心には、どうしても限界があります。
もし完全な自然農法で育てた野菜が欲しいなら、やっぱり育てるしかないのです。
そして市販の有機肥料も使わないなら、畑自体の地力を上げるしかないのです。
私たちはもう後戻りはしません。
根気強く土づくりを続けるだけです。
3. 畑の土を育てることと腸を整えることは、実は密接に関係している
わが家も最初から畑があったわけではありません。
ベランダのプランターひとつから始まったのです。
そしてプランターでミニトマトを育てて気づいたことがあります。
「これ、発酵の原理によく似ている」と。
発酵食品に興味がある方なら、「腸内フローラ」や「菌活」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。
腸内細菌のバランスが偏ると体調を崩しやすくなる。
発酵食品は多様な菌を腸に届けてそのバランスを整えてくれると言われています。
実は、土の中でもまったく同じことが起きています。
土壌微生物のバランスが偏ると、野菜が病気にかかりやすくなる。
だからボカシ肥料(有機物を発酵させた肥料)で多様な菌を土に届けて、バランスを整えるのです。
腸に麹菌や乳酸菌を届けることと、土にボカシ肥料を届けること、
やっていることの原理は、同じなのです。
わが家の食卓は菌で繋がっています。
土と野菜と人間は、菌を介してひとつの輪でつながっている。
スーパーの野菜を買って食べるだけだと、この輪の一部しか見えません。
でもプランターひとつからでも自分で育ててみると、
この「つながり」が、円になっていくのが実感できます。
大きな畑を借りる必要はありません。
ベランダの一角でいいのです。
大事なのは場所の広さではなくて、土と野菜と自分がひとつの循環でつながっていると気づくことなのです。
4. あなたの発酵の知識で、野菜は育てられる
「畑仕事は専門外」
わが家も最初はそう思っていました。
でも実際は違った。
発酵食品を作ってきた知識と経験が、そのまま使える場面が多いのです。
麹の温度管理ができる人は、ボカシ肥料の温度管理ができます。
麹づくりでは、温度を30〜40℃に保って菌糸を育てます。
ボカシ肥料も、有機物に菌を混ぜて温度管理しながら発酵させます。
温度が上がりすぎたら切り返す、下がりすぎたら保温する──
麹のお世話をするのと同じなのです。
発酵食品で腸を整えてきた人に、ボカシ肥料で土壌を整えられる伝えたらどうでしょう。
腸に多様な菌を届けることの大切さが分かっていれば、土壌にも同じことをすればいい効果が得られると、直感的に理解できると思います。
あとは「どんな菌が必要で、どう環境を整えればいいか」、それだけです。
すべての考え方の軸は、発酵食品で培ってきたものと同じです。
「仕込んで、待って、変化を見守る」が好きな人は、農業も楽しめます。
魚醤や味噌を甕に仕込んで、1年後に蓋を開けるときのワクワクした「仕込みの楽しさ」が畑にもあります。
甕に魚を仕込むように、畑に種を仕込む。
味噌の蓋を開けるように、土をひっくり返す。
やっていることは、いつもの台所の延長です。
5. まとめ
「菌活から土活へ」──3つの気づき
✔ 市販の野菜への小さなモヤモヤは、自分で育てることで晴れる
「買う」安心には限界がある。
味噌を自分で仕込むのと同じ感覚で畑を「育てる」。
すべて自分で把握できる安心感は、どんなきれな野菜より価値が高い。
✔ 土の菌を育てることと、腸の菌を整えることは同じ原理
土壌微生物と腸内細菌は、発酵食と同じように多様性が大事。
土と野菜と人間は、菌を介して「ひとつのサイクル」でつながっている。
✔ 発酵の知識がある人にとって、野菜づくりのハードルは想像しているよりはるかに低い
温度管理、微生物の多様性、仕込んで待つ楽しさ──
すべて、発酵食品で培ってきた経験がそのまま活きます。
大きな畑は要りません。
土と対話し、好きな野菜の種をまく、そして急がずに生長を見守る。
子供の成長を見守るように、発酵食を楽しみに待つように。
それぞれの「仕込み畑」でいいのです。
まずはプランターひとつから始めてみませんか。
次の記事では、「有機JASでも見えないもの」と、 自分で育てて初めて出会える「味の多様性」について、 もう少し詳しくお伝えします。
▶︎ 次の記事:育てるトレーサビリティ──有機JASでも見えないもの、畑なら全部わかる|仕込み畑②
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