はじめに
もともと食べることが大好きな夫婦ですが、「食」について深く考えるようになったのは、子供たちのアレルギーがきっかけでした。
中でも長女が重度の食物アレルギーで、赤ちゃんの頃から湿疹がひどく、顔まで赤く腫れていました。
ミルクが飲めなかった長女。
当時健康のために毎朝ヨーグルトを食べていたのですが、小児科で母乳に出てしまっているかもしれないと指導を受け、私自身も乳製品を口にするのをやめました。
最初は「おいしいものを食べさせてあげたい。」と楽しみにしていた離乳食づくりも、食材だけでなく調味料も使えないものが多く、いつの間にか安全だけを考えて料理をするようになっていました。
外食も洋食では食べられるものがほとんどなく、寿司や鍋料理などの和食が中心。
誕生日は手作りのケーキかあんこの入った和菓子。
スーパーではパッケージの裏面を隅から隅までチェック。
「乳成分」を意識しない日はありませんでした。
それ自体は、慣れてしまえばそこまで大変なことではありません。
ただいつの間にか、食事が「楽しいもの」から「気をつけるもの」に変わってしまっていたのです。
発酵食との出会い
そんな日々の中で出会ったのが、発酵食でした。
きっかけは「腸活」という言葉です。
腸内環境を整えることが、アレルギーの改善にも役立つ──
そんな情報を目にして、藁にもすがる想いで調べはじめました。
味噌、甘酒、塩麹、ぬか漬け、ザワークラウトなど、昔から作られていたもので特に目新しいものはないように思いますが、
知れば知るほど奥が深くて面白いものでした。
そして実際に作って食べたとき、
「ああ、これは美味しい」と、純粋に思ったのです。
味噌は、市販のものよりずっと濃厚な味がする。
甘酒は、砂糖を使わずにこんなに甘いのかと驚く。
塩麹に肉を漬けたら、小細工なしに焼くだけで美味しい。
そんな小さな驚きと発見が、毎日の食卓に少しずつ戻ってきました。
アナフィラキシーショックを起こすほどひどかった長女のアレルギーも、完全になくなったわけではありませんが、大きく改善しました。
重度の花粉症で夜も眠れなかった主人の花粉症も、薬なしで過ごせるようになりました。
私自身はというと、子供のころから便秘がちだったのが嘘のように改善しました。
体調だけではありません。
身体にやさしい食事を続けることで味覚も変わってきました。
特に乳製品のこってりとした味や砂糖のストレートな甘味を欲しなくなりました。
食べられないことに不満があったのも、現代食にまみれた味覚になっていたのも、実は子供たちではなく私たち大人だったのだと気づいたのです。
もともと凝り性な2人、古今東西の発酵食を調べては作ることがライフワークになりました。
味噌、塩麹、甘酒、三五八漬け、豆板醤などはじめは麹を使った調味料が多かったのですが、
ある日、魚と塩だけで作れる調味料があることを知りました。
それが魚醤です。
小麦も大豆も乳製品も使わない、アレルギーの心配がない旨味調味料。
しかも添加物や保存料も入っていないのに長期保存が可能な、まさに私たちが求めていた理想とする調味料がまさにそれでした。
仕込んだ魚は数十種類、それぞれが個性的で、一つとして同じものが存在しない唯一無二の味わい。
魚醤に魅了されたわが家、今では味噌を使わない日はあっても、魚醤を使わない日はありません。
そして、畑へ
発酵食品を作る日々が続く中で、もうひとつの出会いがありました。
それが農業です。
都心のマンション暮らしでは、プランターでハーブを育てるのが精一杯。
東京では野菜づくりは無理と諦めていました。
誰かが育ててくれた「化学肥料不使用、農薬不使用」と書かれた野菜に頼る日々。
でも、豆板醤を作るたびに大量のソラマメを探すのに苦労したり、
味噌を作るたびに大豆を北海道から取り寄せたりと、こだわればこだわるほど、自分たちで材料から作りたいという想いは日に日に大きくなっていきました。
そんな時、縁あって畑を借りられることになりました。
車で1時間、近くはありませんが、週末だったら通えないことはない距離です。
これで美味しい野菜がたくさん採れる!と喜んだのも束の間、そこから雑草取りという終わりなき作業がはじまりました。
最初の3年は雑草駆除のために畑に通ったようなものです。
収穫できたのはかぼちゃくらい、何度も心が折れそうになりました。
有機野菜を育てている専業農家の畑を訪れ話を聞いたり、いろいろな文献を読んでいくうちに、
土に問題があるということがわかりました。
自分たちで肥料を作ってはじめて気づいたことがあります。
それが、土づくりと発酵がまったく同じ原理だということです。
麹を育てるときに温度と湿度を管理するように、ボカシ肥料を作るときも温度と水分を管理する。
発酵食品で腸内の微生物を整えるのと同じように、ボカシ肥料で畑の土壌微生物を整える。
畑の土を育てる技術と自分の腸を育てる技術は、同じ「発酵の知恵」でした。
発酵食品を作ってきた知識と経験がそのまま畑に使える。
「農業は専門外だ」と学ぼうとしなかった最初の数年があったからこそ、
自分たちでなんとかしなきゃと覚悟ができたのだと思います。
「畑仕事は発酵の延長線」
私たちの台所から毎日出る生ごみ、貝殻、柑橘の皮、魚のアラ、卵の殻、野菜くず──
これらは捨ててしまえばただの可燃ゴミです。
ただ畑では、これら全てが土壌改良の資材になります。
食卓の「ゴミ」が、畑の「栄養」に変わる。
「消費して捨てる」の一方通行から、「食べる→育てる→また食べる」のサイクルへと変わるのです。
わが家の畑でも、小さな循環農業がはじまっています。
子どもに「ゴミを減らそうね」と何度も言うより、
実際に「この貝殻がどうやってトマトの栄養になるのか」を見せたほうが、本当に大切にしたい心が伝わります。
スーパーに並ぶような形のいい野菜は採れません。
小さかったり大きすぎたり、葉が虫食いだらけだったり。
でも比べものにならないくらい濃い味がします。
一年中採れる野菜はありません。
旬の野菜を食べるだけです。
それでもいいのだと私たちは思います。
「食べ物は生き物なんだ」という実感が、わが家の食卓には溢れています。
食品表示制度では実現できない完全なトレーサビリティ。
野菜をすべて自給自足でまかなうのはまだまだ先かもしれませんが、畑のおかげでその一歩が踏み出せました。
週末農業の詳しい話は、これから別の記事でお伝えしていきます。
→週末農業の記事は近日公開予定です
ブログを始めた2つの理由
同じ境遇にいるお父さん、お母さんへ
アレルギー疾患をもつ子どもを育てていると、
「どうしてうちだけ?」と孤独と不安を感じる瞬間があります。
友達と同じものが食べられない。
給食でおかわりができない。
雑誌で取り上げられる流行りのスイーツ屋さんにも行けない。
そういう日常がいつまで続くのかも、どうやって治るのかもわからない、
本人はもちろん、親だってどうすることもできない自分に不甲斐なさ感じることがあります。
私たちもたくさん悩みました。
このブログが、私たちのように悩んでいるお父さんやお母さんの気持ちに寄り添い、少しでも前に進む原動力になれたらと願っています。
「この調味料なら使えるよ」
「この発酵食品、子どもも食べられるよ」
情報の出し惜しみはしません。
どんどん作ってみてください。
笑顔あふれる食卓がすぐそこに待っています。
子どもたちへの「タイムカプセル」
もうひとつの理由は、もっと個人的なものです。
このブログは、私たちから子どもたちへのタイムカプセルでもあります。
いつか子どもたちが大人になったとき、そして親になったとき、
「子どもの頃にお弁当に入っていた玉子焼きって、どうやって作るんだっけ」
「お父さんが作っていた魚醤って、この魚でも作れるかな」
ふとした瞬間、レシピ本を開くようにこのブログを開いてもらえたらと思うのです。
レシピだけではありません。
「これ美味しいね」と、みんなで競い合うように食べた日のこと、
仕込みに失敗してあまりの臭さに窓を全開にして笑った日のこと、
2年ものの魚醤の蓋を怖いもの見たさに開けた瞬間も、
全部ここに残しておきたい。
忙しい毎日の中では、すぐに忘れてしまうような小さなことかもしれません。
でもその小さな感動を世代を超えて届けたい。
それが、このブログを続けている一番の理由かもしれません。
「発酵おやこ」という名前のこと
「発酵」と「親子」。
発酵食品は、時間をかけてゆっくり育てるもの。
子育てもきっと同じなんだと思います。
すぐには結果が出ない。
途中で不安になることもある。
でも手を抜かずに向き合い続けていれば、ある日ちゃんと「美味しくなる」瞬間が来ます。
手をかけたものは、かならず子ども達の心に届きます。
そしてきっと「おかわり」って言いたくなる。
その声が聞きたくて、今日も張り切って台所に立ちます。
このブログでは、魚醤・味噌・甘酒・塩麹をはじめとした発酵食品や、旬の食材を使った保存食の作り方を、
重要なポイントや仕込みのコツを丁寧に説明しながら紹介しています。
ご飯がすすむおかずや酒の肴にピッタリの珍味も、どれも繰り返し作りたくなるレシピばかりです。
子供も大人も、アレルギーがあってもなくても、みんな一緒に楽しめる。
このブログが「毎日の楽しい食卓」のきっかけになればうれしいです。
