魚醤とは?2000年の歴史を持つ発酵調味料が今まさに注目される理由

本ページはプロモーションが含まれています。

スポンサーリンク

1. はじめに

定期的にやってくる発酵食ブーム。

数年前の塩麹の時は、肉やら魚やら野菜やら、なんでも塩麹に漬けるレシピが続出しました。

いつの時代も主婦の心を掴むのは、「手軽で美味しい、そして甘い」ものたち。

魚醤にスポットライトが当たることは、ほとんどありません。

 

ナンプラー、しょっつる、いしり、コラトゥーラ、ヌクマム、これらはすべて魚醤の仲間です。

その中でもスーパーで手に入る魚醤といったら、ナンプラーくらい。

タイ料理のレシピに「ナンプラー」と書いてあって、買って一度は使ってみたけど、

独特の匂いが気になって冷蔵庫の奥に眠らせてしまった──

そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。

わが家もそうでした。

 

でも今では、わが家には欠かせない調味料になっています。

ナンプラーを使いこなせるようになったということではありません。

使っているのは、自分たちで作った魚醤たちです。

登場回数の多さでいったら塩の次、味噌を使わない日はあっても魚醤を使わない日はありません。

なぜって、魚醤は和食、イタリアン、中華、エスニック料理など、

世界各国の料理に合わせることができるからです。

魚醤の材料は魚と塩だけ、それなのに少し加えるだけで味に深みが増します。

しかも小麦も大豆も使っていないので、アレルギーのあるお子さんがいるご家庭にも安心です。

 

この記事では、「魚醤って何?」というところから、

世界の魚醤の違い、味を決める要素、どんな人におすすめの調味料なのか、

知られざる魚醤の魅力をお伝えします。

 

この記事でわかること

✔ 魚醤の歴史と世界での広がり
✔ 各国の魚醤の違いと味わいの特徴
✔ どんな人にとって「救世主」になる調味料か
✔ 市販の魚醤と手作りの魚醤、何が違うのか

 

2. 魚醤の歴史──2000年以上前からある発酵調味料

魚醤を一言で説明します

魚醤とは、魚を塩に漬けて長期間発酵させた液体の調味料です。

魚のタンパク質が酵素の力で分解されてアミノ酸(旨味の元)に変わり、

それが液体として滲み出してきたエキスです。

「魚醤油」と呼ばれることもありますが、大豆や小麦は使いません。

原料は正真正銘魚と塩だけ、加水も一切していません。

 

古代ローマのガルム

魚醤の歴史は、少なくとも2000年以上前にさかのぼります。

古代ローマでは「ガルム」と呼ばれる魚醤があり、貴族から庶民まで幅広く使われていました。

当時の料理書には、肉料理にも野菜料理にもガルムが登場します。

現代でいう「醤油をかける」感覚で、ガルムをかけていたようです。

ローマ帝国の衰退とともにガルムは歴史の表舞台から姿を消しましたが、

近年、当時のレシピを復元する試みも行われています。

 

東南アジアでの定着

一方、東南アジアでは魚醤の伝統が途切れることなく続きました。

タイのナンプラー、ベトナムのニョクマム、フィリピンのパティスなど、

今でも日常的に使われています。

 

身近に豊富な魚介資源があったことや、熱帯の気候で比較的発酵の進みが速かったことが功を奏したのだと推察できます。

 

日本の魚醤

日本でも奈良時代(8世紀)の文献に、魚を塩漬けにした調味料の記録が残っています。

海に囲まれた日本では、気候や海流によって獲れる魚もさまざまだったため、

各地で独自の魚醤文化が育まれてきました。

その中でも、秋田のハタハタで作る「しょっつる」、石川のイワシやイカで作る「いしる」「いしり」、香川のいかなごで作る「いかなご醤油」は日本三大魚醤と呼ばれ、特に有名です。

ただし、室町時代以降に醤油が普及すると、魚醤は衰退の一途をたどることになります。

それが近年、「グルテンフリー」や「無添加」や「腸活」をはじめとする健康意識の高まりや、アレルギー疾患の急増によって発酵食品全体が見直され、

一般家庭では絶滅寸前だった「魚醤」にも復活の兆しがみえてきました。

 

3. 世界の魚醤マップ

「魚醤」と一口に言っても、国や地域によって原料も味も違います。

主な魚醤をまとめてみました。

 

国・地域 名称 主な原料 特徴
タイ ナンプラー カタクチイワシ 塩気が強く、香りが際立つ。世界で最も流通量が多い。
ベトナム ニョクマム カタクチイワシ ナンプラーよりまろやかで、甘みがある。
秋田 しょっつる ハタハタ 上品で穏やか。和食との相性が抜群。
石川 いしる / いしり イカ内臓・イワシ 濃厚で力強い旨味。煮物や鍋に。
香川 いかなご醤油 イカナゴ 穏やかで使いやすい。初めての方にもおすすめ。
古代ローマ ガルム 多種の魚 現存しないが、復元の試みが各地で行われている。

 

同じ「魚醤」でも、原料の魚が変われば味がまったく違うものになります。

カタクチイワシで作れば力強くストレートな旨味になりますし、

ハタハタで作れば上品で繊細な旨味になります。

 

では、この味の違いは魚の違いだけで決まるのでしょうか?

 

4. 何が味を決めるのか──材料と作り方の「変数」

魚醤の味を決める要素は、大きく分けて4つあります。

ここでは概要だけお伝えします。

 

魚の種類

魚の種類、これが最も味を左右する要素であることは間違いありません。

 

白身魚(スズキ・花鯛など)で作ると、クリアで透明感のある旨味になります。

和食の繊細な味わいの引き立て役には、白身魚の魚醤がおすすめです。

 

一方の青魚(アジ・サバ・イワシなど)で作ると、コクが深くパンチのある旨味になります。

カレーや炒めものなど、しっかりした味つけの料理に向いています。

 

イカの内臓で作る「いしり」のように、魚以外の甲殻類や軟体動物からも魚醤は作れます。

 

どの魚で作るかによって、魚醤の性格がまるで変わる──

ワインのブドウ品種と同じで、魚種が魚醤の「品種」を決めるのです。

 

どの魚で作ったらいいか迷っている方にはこちらの記事がおすすめです。

 

塩の割合と種類

魚醤にとって塩は2つの重要な役割を果たしています。

 

1つ目は安全性の確保、塩の量によって腐敗するか長期熟成できるかが決まります。

青魚は脂やけヒスタミンのリスクがあるため塩を多めに、

リスクの低い白身魚は塩を控えめに設計することができます。

また旨味成分と塩分濃度は密接に関係しているので、魚種によって一番効率よく旨味を引き出すように調整する必要があります。

塩分濃度(比率)の考え方についてはこちらの記事が参考になります。

 

2つ目の味の変化、味わいは塩によっても若干変わります。

未精製の塩か精製した塩か、海塩か岩塩かによって、

仕上がりの「丸み」が変わります。

魚と塩だけで作るからこそ、それぞれをどうこだわるかで、味わいは自由自在に作り出すことができます。

塩の選び方はこちらの記事を参考にしてください。

 

熟成期間

短期(3〜6ヶ月)の魚醤は、旨味がストレートで若々しい味わいです。

長期(1〜2年以上)の魚醤は、旨味が複雑になり、余韻が長くなります。

わが家の魚醤は、白身魚で1.5〜2年、青魚で1〜1.5年を目安に熟成させています。

 

例外的にマイワシの魚醤は追い塩の影響で2年かかりました。

同じく長期熟成の可能性があるのは、サバやサンマといった脂質の多い魚種です。

失敗するリスクもありますが、まめに手入れをすることで、

他にはない味わい深い魚醤を作ることができます。

マイワシの2年熟成のレポートはこちら。

 

容器

ガラス瓶は中が見えて安心ではありますが、外気温の変化をダイレクトに受けてしまうため、

特に長期熟成を目指した発酵には向きません。

わが家でも以前はガラス瓶を使ていましたが、今は甕(かめ)は一択です。

 

そして魚醤成功の秘訣は、一定量以上をまとめて仕込むことです。

失敗するのが怖いからといって、まずは少量から作りたくなりますが、

発酵食においてはリスクが高くなることが多々あります。

 

「いい発酵はいい道具から」

手に入りやすい時期にまとめて甕に仕込みましょう。

 

5. こんな人にこそ魚醤を

アレルギーで調味料の選択肢が限られている方

醤油は大豆と小麦。

めんつゆも白だしも、ベースは醤油。

アレルギーがあると、調味料の選択肢が一気に狭くなります。

魚醤は小麦も大豆も使わずに旨味を出せる、数少ない調味料です。

 

わが家にもアレルギー持ち(乳製品)の子がいます。

みんなと同じものを食べられるのって、子供にとっては本当に嬉しいことなんです。

もし小麦や大豆のアレルギーで普通の醤油が使えないなら、魚醤を使ってみるのはどうでしょう。

煮物も玉子焼きも汁物も、驚くほど美味しくできます。

魚醤は代替品ではなく、醤油とは違う旨味を持つ「新たな選択肢」です。

 

調味料が多すぎて使い分けに疲れている方

めんつゆ、白だし、醤油、ポン酢、だしの素──

冷蔵庫の中に似たような調味料がずらりと並んでいませんか?

よく見ると、どれも原料は大豆ベースで、味の方向性が似ています。

 

魚醤は、それらとはまったく違う「第三の旨味」として無限の可能性を秘めています。

少し加えるだけで、いつもの料理がワンランクもツーランクもアップするのです。

一度使い始めてたら、もう使わない選択はできません。

 

和食だけでなく、洋食、中華、イタリアン、エスニック料理、どんなジャンルの料理にも合います。

めんつゆは便利かもしれませんが、和食以外では使えません。

料理が苦手な方、一人暮らしで自炊を始めたばかりの方におこそおすすめしたい調味料です。

 

本物の味を追求したい方

スーパーに並ぶめんつゆの裏面を見てください。

原材料の欄にずらっと並ぶカタカナの添加物の数々。

それが魚醤にはありません。

 

究極にシンプルな材料から、複雑な旨味が生まれる。

それが発酵の力、まさに自然が織りなす奇跡です。

主張するのではなく、素材そのものの味を引き出してくれる、まさに「陰の立役者」です。

 

6. 市販品と手作り品の違い

魚醤に興味を持ったけれど、いきなり手作りするのはハードルが高い。

そんな方はまず市販品から試すのがおすすめです。

とはいえ、ナンプラーを和食に合わせても、美味しくはありません。

市販品を選ぶなら、どんな料理に合わせたいかで選ぶのがおすすめです。

 

市販品の良いところ

✔ 均一な品質で、すぐ使える手軽さ
✔ スーパーや通販で簡単に手に入る
✔ 自分に合った味わいか、まず試してみられる

仕込んだものは1年後の楽しみに、まずは1本買って試してみるのもいいでしょう。

 

手作り品ならではの魅力

市販品で魚醤の使い方に慣れてきたら、次のステップとして手作りに挑戦してみてください。

手作りの魚醤には、市販品にはない魅力があります。

 

魚種・塩・熟成期間を自分で選べる

定番のカタクチイワシだけではなく、スズキやアジ、花鯛、クロダイ──

魚の種類を変えるだけで、まったく違う味わいの魚醤が生まれます。

 

非加熱で酵素が生きている

市販品の多くは保存のために加熱処理されていますが、

自分で作ると加熱のタイミングも自分で決めることができます。

もちろん非加熱のまま使うこともできます。

その場合、酵素が活きた状態で料理に旨味を加えてくれます。

 

家庭の環境に合わせた唯一無二の味になる

同じ魚種、同じ塩、同じ比率で仕込んでも、

仕込む時期や甕を置く場所の湿度によって仕上がりが微妙に変わります。

 

つまり、まったく同じ魚醤は二つとないのです。

それが自家製魚醤の醍醐味です。

 

材料費は自分で調整

必要な材料は魚と塩だけです。

旬の魚を直売所で買えば、数百円の材料費で1年分の魚醤が仕込めます。

もちろんヒラメやキンメダイなど、魚自体が高額な場合は安くできるとは言い切れません。

わが家がヒラメの魚醤を作るときは、ソゲと呼ばれる小さいヒラメを丸で仕込んだり、6枚おろしにして刺身の柵をとった残りの部分で作ったりします。

釣りが趣味の方は、材料費がほぼかからず一級品の魚醤ができるかもしれません。

そうではない方は、比較的流通量が多い時期にまとめて仕込むのがおすすめです。

 

7. まとめ

魚醤を知る3つのポイント

魚醤は「魚と塩だけ」から生まれる、2000年の歴史を持つ発酵調味料

古代ローマのガルムから、タイのナンプラー、秋田のしょっつるまで、

世界中で愛されてきた旨味の源です。

 

味は魚の種類で決まる

白身魚ならクリアで上品、青魚ならコクとパンチ。

ワインのブドウ品種を選ぶように、好みの味を求めて魚を選びましょう。

 

アレルギー対応で無添加、材料費は自分次第──魚醤は「知る人ぞ知る救世主」

小麦も大豆も使わない旨味調味料。

うどんのつけ汁など醤油の代わりにも使えるのに、醤油とは違う旨味成分をもっています。

 

市販品で試してみるのか、すぐにでも手作りに挑戦してみるのか、

まずはどちらが自分に合っているかを見極めてください。

 

まず市販品を試したい方へ

匂いがマイルドな魚醤なら白身魚の魚醤がおすすめです。

ただイタリアンやエスニック料理などが好きな方は、少し物足りなさを感じてしまうかもしれません。

そんな方には、ナンプラーほど主張しない、イタリアのコラトゥーラという魚醤がおすすめです。

材料は同じカタクチイワシなのですが、面白いくらい味わいが違います。

三ツ星シェフたちも愛してやまない魚醤、一度味わってみてください。

Delfino社のコラトゥーラ(楽天市場)

 

手作りに挑戦したい方へ

はじめての方はこちら、魚醤の全体像がつかめます。

 

魚種ごとの仕込み記事はこちら

初心者向け

▶︎ 定番のイワシやアジより簡単『キビナゴの魚醤』の作り方

▶︎ もったいないなんて言わせない、丸ごと一匹で作る『スズキの魚醤』

 

中級者向け

▶︎ 春こそ仕込みどき『アジの魚醤』の作り方

▶︎ 何鯛がおすすめ?地味でも実力派『花鯛の魚醤』の作り方

▶︎ 鯛の仲間なのに過小評価?『クロダイの魚醤』の作り方

 

上級者向け

▶︎ 魚醤に不向き!?『マイワシの魚醤』仕込みから丸2年を大公開

▶︎ 青魚最高難度に初挑戦『サバの魚醤』の作り方

 

魚醤の変数を深く知りたい方へ

▶︎ なぜ青魚は塩が多いの?『魚醤の塩分比率』を魚の種類で変える理由

▶︎ どんな塩でも作れる?『魚醤に使う塩』の選び方

▶︎ いつ収穫する?『魚醤のテイスティング』完成を見極める5つの軸

 

道具をまとめて紹介します

魚醤作りにおすすめの道具や材料をまとめました。

結果が出るまでに1年以上かかるからこそ、妥協はしたくない。

そんな想いで探したわが家には欠かせないアイテムです。

一度揃えると、毎年仕込むのが楽しみになってきますよ。

 

▼ わが家で使い続けている未精製の海塩、唯一の材料は妥協はしません。
未精製の海塩(楽天市場)

▼ 長期熟成には陶器製の甕(かめ)がベスト
陶器製の甕(~2kgくらい)(楽天市場)

重石も兼ねる万能な漬物用重石
重石1kg(楽天市場)仕込み量1㎏~2㎏
重石1.5㎏(楽天市場)仕込み量1.5㎏~3㎏

3㎏以上仕込むこともある場合は、重石自体を重くするよりも、

重石1㎏×2など重石を足していく方が応用力が増すのでおすすめです。

 

 

タイトルとURLをコピーしました