数年前、漬けるだけで肉が柔らかく美味しくなるという触れ込みで、
世の主婦たちを虜にし、一大ブームを引き起こした発酵調味料『塩麹』。
今や海外進出も果たし、泣く子も黙る市民権を得た、
日本を代表する発酵調味料。
わが家ももちろん、流れに乗り遅れまいと早速作り、
肉やら魚やら野菜やら、色んな食材をせっせと漬けた。
うん、確かに美味しい。
でもね、サラサラしているからか、
素材に上手く絡まない。
それにしょっぱさが際立っていて、麹本来の甘味をほとんど感じない。
作り方間違えた!?
いやいや、何度やっても同じ質感、同じ味。
もっと使いやすくて、わが家にバシっと合致する味わいにするにはどうすればいいか、
ここから試行錯誤の日々が続く。
塩麹をもっともっと美味しく作るには?
目指すのは、水分がほぼないもったりとした質感で、
いい塩梅ながら、しっかりと甘味がある漬け床。
材料が「米麹、塩、水」とシンプルなため、材料の配分だったり工程だったりが、
味にダイレクトに影響する。
まずは質感、これは麹の発酵度合いに比例する。
作りたてはつぶつぶとした硬い食感、それが水分を含むことで、
徐々に柔らかくなる。
ならば、熟成期間を長くしてみよう!と、
通常常温で2週間程で完成する塩麹を、
1ヶ月、2か月、3か月…と、発酵期間を長くしてみた。
1ヶ月くらいまではいい感じだったが、3か月過ぎた頃から、
ポツポツと表面に産膜酵母が出てきた。
特に夏場はポツポツどころか、モコモコに覆われる悲劇。
アラララ…そうだった、
麹は嫌気性発酵で、空気を好まない。
だからといって完全に密封も、自ら発生する微量のガスによって、
徐々に腐ってしまうのでアウト。
塩麹は、作ってから完成するまでの間も、
たまにスプーンで混ぜるので、広口の透明なビンで作る。
中身の状態も確認しやすいし、混ぜやすいという利点もある反面、
表面積が広い分、産膜酵母も発生しやすい。
小さなポツポツ程度だったら、混ぜてしまっても味にそれほど影響はないが、
産膜酵母によって酸味が生じるため、さすがに表面のモッコモコしたところは取り除く必要がある。
麹は2倍くらいにまで膨らみ、驚くほど柔らかくなっているとはいえ、
甘味より酸味が勝ってしまっては、元も子もない。
これは成功とは言えない。
次に試したのが、水の代わりにお湯を使う方法。
お湯といっても、熱湯ではなく、
麹菌の活動を促す、60度くらいのぬるま湯。
この方法だと、2~3日で使えるくらいの柔らかさになる。
でもここからは一緒、産膜酵母との仁義なき戦い。
温度を上げるのがOKなら、ヨーグルトメーカーはどうだろう?
早速家にあるヨーグルティアのレシピ集を開いてみると…ありました!
60度で6時間、設定温度は米麹甘酒と同じ、
違いは加熱する時間が塩麹の方が若干短いのと、塩が入るかどうかだけ。
米麹100%で作る甘酒が、驚くほど甘いのと同じく、
ヨーグルティアで作った塩麹は、常温で作った塩麹より断然甘い。
あとはこの気になる「冷蔵庫で保管して下さい。」の一文。
わが家の冷蔵庫、6人家族にしては極小の200L。
塩麹をストックできるスペースはない。
ここまでやると、わが家の理想の塩麹像が見えてくる。
✔常温でも保存できて、使いたい時に使いたい分だけ取り出す。
✔メンテナンスはほぼいらない。
✔しょっぱさの中にも甘味がある。
✔素材との馴染みがいい。
そんな都合のいい漬け床、どこにある?
「そんなにもったり(!?)させたいなら、ミキサーで撹拌してみたら?」
ちょうど煮詰まっているところに、隣にいた主人がボソっと呟いた。
なるほど、それはなかなかいい考えかもしれないとやってみると、
麹のつぶつぶ感はどこにやら。
もったりを通り越して、それはそれはクリーミーな塩麹が出来上がった。
当然素材との馴染みは抜群に良い。
ちょっと思っていたのと違うけど、これはこれで成功なんだと思う。
わが家に合う塩麹の完成がすぐそこまで来たところに、食いしん坊次女が、
「じぃじのところで食べたキュウリの漬物が食べたーい。」とやってきた。
あぁ、三五八漬けね。
うん?
…
そうだ!
わが家には『三五八漬け』がある!
塩麹じゃない!三五八漬けだー!!
三五八漬け(さごはちづけ)は、塩と麹と米を、
文字通り3:5:8の割合で合わせたもので、山形や福島で昔から親しまれているお漬物。
生まれも育ちも山形の私、正真正銘三五八漬け育ち。
地元のスーパーでも、野菜売り場と調味料売り場のどちらにも並ぶくらい、
キムチの素級のメジャーな存在。
見た目は塩麹とほぼ同じ、親戚みたいなもの。
ただ塩麹とのサラサラした感じとは違って、もったりと重ための質感。
塩麹と三五八漬け、いったい何が違うって、
米が入るか入らないかだけ。
正確に言えば、ゆるめに炊いたおかゆみたいな蒸米。
米は加熱することによって甘くなる。
だから、麹に水だけを加える塩麹より、甘味は格段に出やすい。
もちろん、塩麹をじっくり発酵させていったら麹特有の甘味も出てくるが、
加熱した米の甘さを甘くみちゃいけない。
ぬか漬けのように、漬け床として使い続けることもできなくはないが、
味も安定しにくいので、おすすめはしない。
素として2回くらい使うくらいがちょうどいい。
野菜と一緒に少量揉んで、一日寝かすだけで、
箸が止まらない絶品のお漬物が出来上がる。
結論、現状わが家では三五八漬けに勝るものなし。
塩麹にハマってて、何でも塩麹に漬けちゃうんですって方や、
玉ねぎ麹、トマト麹、にんにく麹等々、野菜麹作り大好きですって方は、
そちらの道を突き進んでいただくとして…
三五八漬けは、
塩麹が冷蔵庫の主と化してしまっている方、
夏にキュウリが大量に採れる予感がする方、
子供が野菜嫌いでホトホト困っている方、
そんな何とかしたいんです!に、全力で寄り添います。
基本の三五八漬けの作り方はこちら。
残ったご飯を有効利用したい方はこちら。
米麹は、乾燥麹ではなく、生の麹がおすすめ。
冷凍すると半年くらいは保存できるので、まとめて買っておくと便利。
三五八漬けだけでなく、味噌、甘酒や醤油麹など色々作っていると、
あっという間になくなる。
すぐに使いたい、麹屋さんに出向くのが億劫、そんな時は、
山形・米沢の『おたまや』からお取り寄せ可能。
貴重な無農薬・有機栽培の生麹や玄米麹も取り扱っている。
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