魚醤って、実は世界中で使われている調味料だと知っていましたか?
タイのナンプラー、ベトナムのニョクマム、イタリアのコラトゥーラ、韓国のアミの塩辛……
国は違っても、みんな「魚を発酵させた、旨味の塊」を料理に使っているんです。
そして、その世界の魚醤の多くが、青身魚(カタクチイワシなどの青魚)で作られています。
青身魚の魚醤は、白身魚の魚醤とは正反対の個性。
力強くて、パンチがあって、コクが深い。
辛味の強いタイ料理や韓国料理でも、オイルたっぷりのイタリアンや中華料理でも、
負けずに主張してくれるんです。
そこが、繊細な味わいを求める和食との一番の違い。
この記事では、青身魚の魚醤で作る、世界5つの国の料理レシピをご紹介します。
タイ、イタリア、日本、中国、韓国。
一本の魚醤で、世界を旅するような食卓になりますよ。
そして実は、この記事は入口でもあります。
ひとつひとつのレシピの先に、もっと深掘りした記事や、
畑で育てた野菜とつなげた記事が、これからどんどん増えていく予定です。
気になるリンクがあれば、ぜひ覗いてみてください。
「青身魚の魚醤って?」「白身魚との違いは?」という方は、こちらもどうぞ。
この記事で紹介するレシピ
① ガパオライス(タイ)
② トマトソースのパスタ(イタリア)
③ お雑煮(日本)
④ 野菜の炒めもの(中華)
⑤ スンドゥブチゲ(韓国)
使う前に──白身魚と青身魚、使い分けの考え方
白身魚の魚醤と青身魚の魚醤は、得意なことがまったく違います。
白身魚の魚醤は、「素材の味を活かす」のが上手。
油や香辛料、スパイスのような、味そのものを左右する追加の材料とは、実はあまり合いません。
そういうものを足すより、素材の味をそっと引き立てる。そんな使い方が得意です。
繊細な旨味だからこそ、シンプルな和食でいちばん輝きます。
青身魚の魚醤は、そもそもがインパクトのある味。
だから、多少強めの素材や調味料と組み合わせても、相乗効果を狙えるんです。
辛味、油、香辛料──どんと来い、というタイプ。
だからこそ、世界中の「しっかり味」の料理で本領を発揮します。
ただし、青身魚の魚醤を使うときに、ひとつだけ気をつけてほしいことがあります。
量を間違えると、魚醤の匂いが強すぎてしまうんです。
白身魚の魚醤は、たっぷり使っても上品にまとまります。
でも青身魚の魚醤は、香りが力強いぶん、入れすぎると料理が「魚醤くさく」なってしまう。
だから、使う量は、料理のジャンルによって変えてください。
これが、白身魚の魚醤との一番の違いです。
<多めに使ってもOKな料理>
タイ料理や韓国料理のようなエスニック系、そして具沢山のお雑煮や酒粕汁。
エスニック料理は、魚醤の香りそのものを、素材と合わせて成り立たせている料理。
魚醤くささが、むしろ「本場の味」になるんです。
具沢山の汁物も、大根や里芋などの具がそれぞれに主張するので、魚醤が多くても負けません。
<控えめにしたい料理>
イタリアンは、魚醤を「隠し味」として使う料理。前に出すぎると台無しになります。
中華や韓国料理は、オイスターソースやコチュジャンといったほかの調味料とのバランスが命。
魚醤を入れすぎると、せっかくの味のバランスが崩れてしまいます。
「香りを活かす料理は多めに、バランスを取る料理は控えめに」
これが、青身魚の魚醤を使いこなす、いちばんの感覚です。
塩分濃度にも、ちょっとした違いがあります
もうひとつ、知っておいてほしいこと。
わが家では、白身魚の魚醤より、青身魚の魚醤の方が塩分濃度が高めです。
これは脂の多い青身魚の発酵を安定させるための設計なのですが、
そのぶん、青身魚の魚醤は同じ「大さじ1」でも、塩気をしっかり感じやすい、ということでもあります。
なぜ青身魚の方が塩を多くするのか、詳しい理由はこちらで解説しています。
→なぜ青魚は塩が多いの?『魚醤の塩分比率』を魚の種類で変える理由
そして、青身魚の魚醤は、当然ながら白身魚の魚醤より、少なめの量で十分です。
この記事のレシピも、その前提で組んでいます。
味見をしながら、お好みで調整してください。
① ガパオライス(タイ)──本場の味は、魚醤で決まる
エスニックの代表、ガパオライス。
実は、日本でおなじみのガパオと、本場タイのガパオは少し違います。
本場はもっとシンプルで、ハーブ(ホーリーバジル)と魚醤の風味が主役。
甘さ控えめで、魚醤の塩気と旨味がぐっと効いた、大人の味です。
今回は、日本でも作りやすいガパオライスとして、
青身魚の魚醤を効かせたレシピをご紹介します。
タイ料理は魚醤の香りそのものが味の土台になる料理なので、
ここでは思い切って魚醤を主役にしてください。
材料(2人分)
✔ 鶏ひき肉……200g
✔ パプリカ・玉ねぎ……各1/2個
✔ きのこ(しめじなど)……お好みで
✔ にんにく・唐辛子……各お好みで
✔ バジル……ひとつかみ
✔ 青身魚の魚醤……大さじ1
✔ オイスターソース……大さじ1/2(魚醤の半量)
✔ 本みりん……大さじ1
✔ ごはん……2人分
作り方
① にんにく・唐辛子を油で炒め、香りが出たら鶏ひき肉を炒めます。
② 野菜を加えて炒め、青身魚の魚醤・オイスターソース・本みりんで味付け。
③ 火を止める直前にバジルを加えて、さっと混ぜます。
④ ごはんにのせ、目玉焼きを添えて完成。
<コツ> オイスターソースは魚醤の半分の量を目安にすると、バランスがちょうどよくなります。甘みは本みりんで。砂糖を使わなくても、本みりんの自然な甘さで十分まとまります。

実は、タイには完成したナンプラーに唐辛子を加える、辛いナンプラーがあります。
わが家でも、これを真似て作っています。
これがあると、ガパオがもう一段、本場の味に近づくんです。
詳しくは、別の記事で公開予定です。
→畑で育てた唐辛子で作る、辛い魚醤の作り方(近日公開予定)
② トマトソースのパスタ(イタリア)──アンチョビの代わりに、隠し味として
イタリア料理と魚醤?と思うかもしれませんが、
イタリアにもコラトゥーラという魚醤があり、カタクチイワシ(アンチョビ)は定番の旨味食材です。
つまり、青身魚の魚醤は、アンチョビの代わりになるんです。
ただし、ガパオのときとは違って、ここでは魚醤はあくまで「隠し味」。
トマトソースに少し加えるだけで、お店のような深い旨味になります。
材料(2人分)
✔ パスタ……200g
✔ トマト(生)……8個、またはトマトピューレ
✔ にんにく……1片
✔ 玉ねぎ……1/4個
✔ 青身魚の魚醤……小さじ2
✔ オリーブオイル……大さじ2
✔ お好みで:唐辛子、バジル
作り方
① トマトは皮を湯むきして、ざく切りにします。トマトピューレを使う場合はそのままでOK。
② にんにくとオリーブオイルを弱火で熱し、香りを出します。
③ みじん切りの玉ねぎを炒め、トマトを加えて煮込みます。
④ 青身魚の魚醤を小さじ2加えて、コクと旨味を足します。
⑤ 茹でたパスタを和えて、お好みでバジルを添えて完成。
<コツ> わが家では、トマト8個分が1パックになったオーガニックのトマトピューレを使っています。生のトマトが手に入らない季節は、ピューレで代用すると手軽です。魚醤は控えめに、隠し味として加えてください。

このトマトソースを作っていて、いつも思うことがありました。
「イタリアンに合わせるなら、現地の作り方を真似て作った方がいいのかな」と。
実はイタリアでは、アンチョビと魚醤を、同じカタクチイワシから、両方同時に作っているんです。
身をアンチョビに、アラを魚醤に。
詳しくは、こちらの記事でご紹介しています。
→1匹のイワシから2つの発酵食品を──コラトゥーラ風魚醤とアンチョビの同時仕込み 近日公開
③ お雑煮(日本)──根菜の甘みを、青身魚が引き立てる
白身魚の魚醤は「すっきりしたお吸い物」に向きますが、
具沢山のお雑煮には、力強い青身魚の魚醤がよく合います。
大根、にんじん、里芋……お雑煮には根菜をたっぷり入れますが、
根菜はもともと甘みが強い食材。
だから、具をたっぷり入れても、青身魚の魚醤がちゃんと存在感を持って応えてくれます。
材料(2人分)
✔ 餅……2〜4個
✔ 鶏もも肉……100g
✔ 大根・にんじん・里芋など……たっぷり
✔ 水……2ℓ
✔ だし粉……適量
✔ 青身魚の魚醤・本みりん・日本酒……各100cc(同量)
✔ 塩や醤油……味を整える分
✔ 仕上げに:三つ葉
✔ お好みで:七味唐辛子
作り方
① 鍋にうすく油を引き、小さく切った鶏もも肉を炒めます。
② だし粉を加えた水に、にんじんや大根、ゴボウなどの根菜類を入れます。
ゴボウはささがきにした後、少し水にさらしておきます。
※里芋はもったりとしてしまうので、少しあとに入れます。あらかじめ下茹でしておいてください。
③ 青身魚の魚醤・本みりん・日本酒を同量加えます。
④ 塩や醤油で味を整えます。
⑤ 餅を加えます。
焼いてから入れると香ばしく、火の通りも早いです。
⑥ 仕上げに三つ葉を加えて完成。お好みで七味をかけてどうぞ。
<コツ> 根菜の甘みがしっかりあるので、青身魚の魚醤は多めでも負けません。だし粉については、のり汁のときにご紹介した2種類のだし粉と同じものを使っています。
→常備したい2種類のだし粉(近日公開予定)
④ 野菜の炒めもの(中華)──肉なしでも、子どもがモリモリ食べる
中華の野菜炒めも、青身魚の魚醤が大活躍。
ここで、ひとつ自信を持ってお伝えしたいことがあります。
この野菜炒めは、お肉なしでも、十分すぎるほど美味しいんです。
発酵調味料の力を信じて、肉に頼らない一皿です。
材料(2人分)
✔ お好みの野菜(チンゲン菜・もやし・キャベツなど)……300g
✔ にんにく……2片くらい
✔ 青身魚の魚醤……小さじ2
✔ オイスターソース……小さじ1(魚醤の半量)
✔ アキアミの甘味噌……小さじ1
✔ 本みりん……小さじ1(あれば紹興酒に置き換えても)
✔ ごま油……大さじ1
作り方
① ごま油でにんにくを炒め、香りを出します。
② 野菜を強火でさっと炒めます。
③ 油が全体に馴染んだところで、本みりん(あれば紹興酒)を加えてさっと炒め、さらに青身魚の魚醤・オイスターソース・アキアミの甘味噌を加えて手早く炒め合わせます。
④ 火を通しすぎず、シャキッとした食感を残して完成。
<味の特徴> 少し甘いけれど、しっかり塩味がついて、魚介の旨味がプラスされた味わいです。季節によって使う野菜は変わっても、子供たちはモリモリ食べてくれる味付けです。
<大人向けアレンジ> 物足りない方は、食べる直前にラー油や食べるラー油をかけてください。香辛料を完成後にかける形にすれば、子どもはマイルドに、大人はしっかり辛く。ご飯がもう一杯欲しくなる味になります。

⑤ スンドゥブチゲ(韓国)──キムチの本場も、魚醤の国
最後は韓国料理。
実は、キムチ作りには魚醤(アミの塩辛やイワシエキス)が欠かせません。
韓国も、魚醤を愛用する国なんです。
だから、青身魚の魚醤は韓国料理にぴったり。
ただし、ここもコチュジャンとのバランスがあるので、魚醤は控えめを意識してください。
ピリ辛のスンドゥブチゲに加えると、本場の深い味わいに近づきます。
材料(2人分)
✔ 絹ごし豆腐……1丁
✔ 豚バラ肉……100g
✔ キムチ……100g
✔ 卵……1個
✔ だし……400ml
✔ 青身魚の魚醤……大さじ1/2〜1(控えめに)
✔ コチュジャン・粉唐辛子……各大さじ1
✔ にんにく……1片
作り方
① 鍋でごま油(分量外)とにんにく、豚バラ肉を炒めます。
② キムチを加えて炒め、コチュジャン・粉唐辛子を入れます。
③ だし粉を入れた水を注ぎ、青身魚の魚醤を控えめに加えて煮立てます。
④ 豆腐を大きめに崩して入れ、ひと煮立ち。
⑤ 仕上げに卵を落として完成。
<コツ> コチュジャンの辛さと魚醤の旨味のバランスが大事なので、魚醤は少量から試して、足りなければ少しずつ追加してください。寒い日に身体が温まる一品です。
韓国料理といえば、やっぱりキムチ。
実はわが家では、畑で育てた白菜を使って、自家製キムチも仕込んでいます。
畑の白菜と、青身魚の魚醤で作るキムチ。
こちらは、冬の公開を予定しています。
→畑の白菜で作る、自家製キムチの作り方(冬公開予定)
あとは気になるコチュジャン、こちらも甘さ控えめで作っています。
→甘さ控えめ、韓国料理におすすめのコチュジャンの作り方(近日公開)
まとめ──青身魚の魚醤で、世界を旅する
✔ ガパオライス(タイ) ── 魚醤は主役級。多めでOK
✔ トマトソース(イタリア) ── アンチョビ代わりの隠し味
✔ お雑煮(日本) ── 根菜の甘みに、力強い青身魚を
✔ 野菜炒め(中華) ── 肉なしでもしっかり美味しい、他の調味料とのバランスを大切に
✔ スンドゥブチゲ(韓国) ── コチュジャンとのバランスで控えめに
青身魚の魚醤は、繊細な和食とは正反対の、世界の「しっかり味」の料理にはまる万能調味料です。
油にも、スパイスにも、辛さにも、負けない。
だからこそ、ジャンルによって「多めでOK」「控えめに」の使い分けが大事になります。
香りを活かすエスニックや、具沢山のお雑煮・酒粕汁は多めに。
隠し味のイタリアン、ほかの調味料とバランスを取る中華・韓国は控えめに。
このひと手間で、青身魚の魚醤はもっと使いこなせるようになります。
そしてこの5品は、実は──
「子どもが小さくて、気軽に外食に行けない」「アレルギーがあって外食が心配」というご家庭にこそ、おすすめしたいんです。
わが家が長年そうだったように。
タイ料理も、イタリアンも、中華も、韓国料理も。
外食の味を気軽に台所で作り出せたら、作るのも食べるのも、もっと楽しくなりますよ。
白身魚の魚醤との使い分け
ポイントは、合わせる素材の味わいです。
✔ 卵のような優しい素材、油や香辛料を使わない料理 → 白身魚の魚醤
✔ 油、スパイス、辛味のある強い素材 → 青身魚の魚醤
白身魚の魚醤は、引き算の美しさ。青身魚の魚醤は、足し算の強さ。
2本を使い分けると、料理の幅が一気に広がります。
そして、毎日使うと、青身魚の魚醤もあっという間に減っていきます。
カタクチイワシなど青魚が新鮮な状態で手に入ったら、ぜひ仕込んでみてください。
→自家製魚醤、どの魚から始める?7魚種から選ぶこだわりの1本
今回のレシピで使ったおすすめの食材と調味料
後日紹介します。
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