こんにちは。
都内で発酵ワークショップnanairo!を主宰しています、マキ太です。
はじめての方は、こちらもどうぞ。
自家製の発酵食品を使った料理は、Twitterでほぼ毎日更新中。
秋も深まり寒さが増してくると、魚醤作りにおすすめの季節がやってきます。
魚醤(ぎょしょう)とは、魚を塩漬けにして長期間発酵させる日本の伝統的な調味料です。
海に囲まれている日本では、昔から各地方で作られています。
よく知られているものには、
✔ 秋田の「しょっつる」
✔ 石川の「いしる(いしり)」
✔ 香川の「いかなご醤油」
があり、日本三大魚醤とされています。
日本だけではなく、魚醤は世界中で作られています。
その中でも、タイのナンプラーは、
スーパーなどでも購入することができる、最もポピュラーな魚醤のひとつです。
わが家では、7年前から魚醤を作り始めました。
ナンプラーはたまに使うんですが、日本の魚醤って使ったことがなくて…
自分でも作ることができるんですか?
ワークショップの時も、棚にずらりと並んだ魚醤のビンをみて、
質問を受けることがあります。
今回は、自宅で魚醤を作ってみたい方の質問にお答えします。
この記事では、
✔ ナンプラーを使いこなせなかった私が、どうして魚醤を作ることになったのか
✔ 魚醤は毎日使える「最高に優秀なだし」だと思う理由
✔ だれでも作ることができる!「自家製魚醤の完全マニュアル」
について、まとめました。
ナンプラーを使いこなせなかった私が、なぜ魚醤を作ることになったのか
魚醤はアンチョビ作りの副産物だった
ガパオライスやトムヤムクンを食べたくて、よくタイ料理屋さんに通っていました。
自分でも作ってみようと、その味の要とも言えるナンプラーを1瓶購入してみたものの、
家庭料理には活躍する機会も少なく、数回使った後は冷蔵庫の主と化していました。
そんな時、アンチョビを作っていた主人から、
主人:「これ魚醤だよ。」
と、謎の茶色く濁った液体を渡されました。
マキ太:「魚醤って…?」
その時は全くの無知で、「魚醤=ナンプラー」ということすら理解していませんでした。
怪しい液体ではありましたが、魚の香りがほんのりとしたちょっと変わった調味料として、
少しずつ料理に使ってみることにしました。
魚醤は毎日使える「最高に優秀なだし」である
材料となる魚の種類が豊富な魚醤
私がはじめて手にした魚醤は、片口鰯(カタクチイワシ)を使ったものでした。
イワシは、ニシン科のマイワシとウルメイワシ、
カタクチイワシ科のカタクチイワシの、主に3種類あります。
カタクチイワシは、地域によっては「セグロイワシ」と呼ばれ、
そのほとんどが煮干し(いりこ)に加工されます。
実は、タイのナンプラーもイタリア・シチリア島のコラトゥーラという魚醤も、
カタクチイワシを原料に作られています。
日本国内でも海外でも、主流はやはりカタクチイワシの魚醤です。
そうは言っても、カタクチイワシでなければダメかというと、
決してそうではありません。
ざっと調べてみただけでも、
赤身魚では、「鰯(イワシ)」「鯖(サバ)」「鯵(アジ)」「秋刀魚(サンマ)」「鰤(ブリ)」「鰹(カツオ)」「キビナゴ」、
白身魚では、「鮭(サケ)」「鯛(タイ)」「キンキ」「鮎(アユ)」「鰰(ハタハタ)」「飛魚(トビウオ)」「金目鯛(キンメダイ)」と、
ものすごく沢山の魚醤があるんですね。
海の魚だけでなく、川魚などの淡水魚でも作られています。
しかも、魚以外では「イカ」や「雲丹(ウニ)」や「帆立(ホタテ)」、
「海老(エビ)」や「牡蠣(カキ)」を使ったものもありました。
市販の商品の中には見つけることができませんでしたが、
わが家ではその他に、「鮃(ヒラメ)」や「鰈(カレイ)」、
「魴鮄(ホウボウ)」や「メヒカリ」などでも作っています。
素材によって味も香りも変わるので、魚醤の世界は奥が深いです。
魚醤はだしパック要らず!?「無添加」好きな人にこそおすすめの万能調味料
魚醤の最大の特徴は、これでもか!というくらい、
魚の旨味が凝縮していることです。
タイやイタリアでも作られているように、アジア料理やイタリア料理など、
ジャンルを問わずに合わせることができる、いわば万能調味料です。
わが家でも、よくトマトソースの隠し味に使います。
ほんの少し加えるだけで、より深みのある味わいに変わります。
和食中心のわが家は、煮物やそばのつけ汁など、
何気ない普段の料理にも、出汁(だし)として魚醤を使います。
味を確かめながら、少しずつ、少しずつ足すようにします。
思ったよりも存在感のある味なので、香りをつけるくらいのつもりで使うのがおすすめです。
こちらの記事で、使い方をまとめています。
魚醤はだれでも作ることができる!「自家製魚醤完全マニュアル」
失敗が少ない材料選び
魚醤の材料は、新鮮な魚と塩だけです。
市販品は、熟成期間を短縮するために麹を加えたものや、
味わいがマイルドになるように砂糖が添加されたものなど、
塩以外の調味料が入っているものもありますが、
基本的には魚と塩だけで作ります。
新鮮な魚であれば、何でもOKですが、
ひとつだけ気をつけておきたいことがあります。
それは、脂の少ない魚で作ることです。
旬の魚は、脂がのっていて美味しいのですが、
魚醤作りには不向きです。
それを実感したのが「サンマ」と「サバ」と「マイワシ」でした。
サンマは9月~10月、サバは晩秋から冬にかけて、
マイワシは「入梅いわし」と呼ばれる梅雨の時期が、脂がのっていて美味しいとされています。
これらのように、旬で脂がのっている魚で魚醤を作ると、
液体の表面に脂が浮いてきて膜のようになります。
この脂は発酵するにつれて酸化するので、魚醤の味も風味も悪くしてしまいます。
その時は、脂の部分だけを取り除くのですが、
漉す時もペーパーフィルターが詰まってしまい、
漉しにくいという難点があります。
魚醤作りがはじめての方は、失敗を避けるために脂の少ない魚を選ぶことが大切です。
東京のマンション暮らしでもできる、魚醤の作り方
それでは、早速魚醤の作り方をご紹介します。
魚醤は、大きく「仕込み」と「濾過(ろか)」の2つの工程に分けられます。
仕込みの工程
まずは仕込みの工程です。
作りやすいカタクチイワシの魚醤を例に挙げて、ご説明します。
イワシは、魚に弱いと書くように、
鮮度が落ちやすいのが特徴です。
なるべく、その日に水揚げされた新鮮なものを購入するようにしましょう。
鮮度を保つために、氷の中に詰めて持ち帰ります。
氷を入れるのは、鮮度を保つためですが、
もうひとつ重要な役割があります。
それが「血抜き」です。
クーラーボックスで保存して数時間経つと、徐々に氷が溶け、
血が水に溶けだして外に出ます。
それをさっと水で洗いながしてから、水気を切り、
広口のビンの中に塩と一緒に詰めていきます。
その後、蓋用の塩をのせます。
魚全体が水につかっていることが確認できたら、そのまま熟成させます。
濾過の工程
次に「濾過」、つまり漉す工程です。
必ず2回行います。
1回目は、骨などを取り除くためにザルを使います。
2回目は、液体の濁りの原因である細かいウロコなどを取り除くため、
コーヒー用のペーパーフィルターを使います。
2回の濾過の工程を終えた魚醤は、透き通った琥珀色になります。
火入れをして加熱処理される場合がほとんどですが、わが家ではしていません。
そのため、酵素の働きにより発酵は続きます。
発酵状態が続いているため、常温で保存すると、
漉した時よりも味も香りも濃くなります。
あっさりとした味が好みの方は、冷蔵保存がおすすめです。
材料や細かい注意点は、こちらにまとめています。
熟成期間はお好みで
魚醤の味や香りは、魚の種類はもちろん、
熟成期間によっても大きく変わります。
市販の魚醤は、1年以上熟成させたものが多く、
中には3年間長期熟成させたものもあります。
商品化までに数年かかるのであれば、小瓶で数千円というのも頷けます。
では、熟成が進むとどうなるのでしょう?
塩味は若干マイルドになりますが、一方で香りが徐々に強くなります。
特に1年以上熟成させたものは、強烈な香りになります。
香りが穏やかな魚醤が欲しい時は、2か月程で漉すのがおすすめです。
私自身強い香りが苦手なので、仕込んだことを忘れて長期熟成になってしまった場合を除き、
ほとんど1年以内で漉しています。
それでも、魚の旨味は十分に感じることができます。
これが正解!というものがないのが、発酵の世界です。
熟成期間も自分の好みの味を追求して、いろいろ試してみましょう。
まとめ
この記事では、自宅で魚醤を作ってみたい方に向けて、
私自身が7年間、魚醤作りをして感じたを中心にお伝えしました。
自家製魚醤のメリットは、
✔ 豊かな香りと上品な旨味が加わり普段の料理がグレードアップ
✔ 捨ててしまう魚のあらでも作ることができる
✔ めんつゆなどの旨味調味料がいらない
✔ 小麦・大豆アレルギーでも、醤油の代用品として使うことができる
わが家では「魚醤と味噌があればなんとかなる!」と、本気で思っています。
味噌は寒仕込みがいいと言われるように、魚醤もまた寒い時期に仕込むのが、
失敗も少なくおすすめです。
私自身新しい素材と出会う度に、魚醤にしたらどんな味になるんだろうと、
ワクワクしながら作っています。
魚醤は、少量からでも作ることができるので、
興味のある方は是非チャレンジしてみてください!
市販されている魚醤の紹介
「魚醤って、何を選んでいいのか分からない…」と悩んでいる方へ。
まずは、定番のカタクチイワシと、
上品な香りの白身魚の魚醤を1本ずつ揃えてみるのはいかがでしょう?
アジア料理やイタリア料理には、カタクチイワシの魚醤を、
白だしや薄口しょうゆの代わりに和食に使うのは、白身魚の魚醤を、
料理に合わせて使い分けるのも、きっと面白いですよ。
はじめての方は、Delfino社(デルフィーノ)のコラトゥーラがいいかもしれません。
✔ 材料がカタクチイワシと塩だけ
✔ 頭と内臓を取り除き熟成させる
✔ 熟成期間が5か月とあまり長くない
香りも穏やかで、料理に合わせやすい魚醤です。
もう少し魚醤について知りたい方へ、
メニューの「自家製調味料」の中に、「魚醤」の記事をまとめています。
わが家で作っている魚醤の一部を紹介していますので、よろしければご覧ください。
この記事が少しでもお役に立てたら嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。