はじめに
魚屋さんで、思いがけずキビナゴが安く手に入ることがあります。
唐揚げ、塩焼き、佃煮、お刺身、どれも美味しそうで迷ってしまいますが、
もし新鮮なものが手に入ったら、ぜひ魚醤を仕込んでみてほしいんです。
わが家では7年以上、いろんな魚で魚醤を作ってきましたが、
キビナゴは「下処理がほぼいらない」という点で、初めての方にも全力でおすすめできる素材だと気づきました。
それに、キビナゴならではのまろやかで甘みのある旨味は、アジやイワシとはひと味違う仕上がりになります。
この記事でわかること
✔ キビナゴが魚醤の素材として優れている理由
✔ 鮮度の良いキビナゴを選ぶためのチェックポイント
✔ 失敗しないための仕込みの手順と注意点
② キビナゴの魚醤ってどんなもの?
無添加で作れる、安心の発酵調味料
魚醤は醤油のように使うことももできますが、旨味成分が多く含まれているため、
どちらかというとめんつゆや白だしのような万能調味料に近い存在です。
スーパーに並んでいるめんつゆって、裏のラベルを読むと添加物が色々入っていますよね。
その点キビナゴ魚醤の材料は、魚と塩だけと安心です。
それなのに、少し加えるだけで料理の味がグッとひきしまります。
わが家では「ちょっと味が決まらないな」というときの、最後の切り札にもなっています。
雑味のないクリアな味わいは、白身魚を彷彿とさせる一級品レベル。
ナンプラーやいしるといった市販の魚醤が苦手な方には特におすすめです。
それに小麦も大豆も使っていないので、アレルギーのあるお子さんがいるご家庭にも安心してすすめられる調味料なんです。
わが家もアレルギー持ち(乳製品)の子がいるのですが、みんなが同じものを食べられるのって嬉しいですよね。
〇発酵の仕組みを論理的に理解したい方へ
キビナゴは小型魚なので体に対する内臓の割合が大きく、魚自身が持つ分解酵素(プロテアーゼ)が体重比からみて豊富です。
塩分で腐敗を抑えながら、酵素がじっくりとタンパク質を旨味成分(グルタミン酸など)に変えていきます。
脂質が少ない分、脂が劣化(脂やけ)するリスクが低く、クリーンな旨味が出やすいのが特徴です。
③ 材料と道具
材料(仕込み量:500g)
| 材料 | 分量 | メモ |
|---|---|---|
| キビナゴ | 500g | 当日水揚げが絶対条件 |
| 塩(天然海塩) | 150g | 魚:塩 = 3:1が基本 |
キビナゴについて
キビナゴはニシン目クルペオイデア亜目に属する体長5~10cm、体重2〜8g程の小さな青魚です。

鹿児島・南西諸島を中心に九州沿岸に多く分布し、回遊性が高く季節によって味わいが大きく変わります。
キビナゴの旬の時期は産卵前の春から初夏。
まさに今が脂がのっていて、旨味成分が多い時期です。
塩について
精製塩でも作れますが、未精製の塩の方がミネラル分が多く含まれていて、 発酵の助けになるとされています。 わが家では海の素材を使う時は、岩塩ではなく海塩を使うようにしています。 特に魚醤作りには欠かせません。 →わが家おすすめの未精製の海塩
道具
| 道具 | 用途 |
|---|---|
| 甕(かめ)またはガラス瓶 | 仕込み容器 |
| 重石・押し蓋 | 素材を液中に沈める |
| 計量スケール | 塩の量を正確に量る |
| ボウルとザル | 塩水洗浄用 |
一番重要なのは保存容器です。
ガラス瓶でも作れますが、甕(かめ)が断然おすすめです。
甕は熱を伝えにくいので、夏の暑さや冬の寒さから発酵液を守ってくれます。
長期熟成する魚醤の場合、仕上がりにダイレクトに影響を及ぼします。
わが家でも魚醤は必ず甕で漬けます。
口が広くて仕込みやすく、重石もしやすいので失敗しません。
おすすめの陶器製の甕初めてなので中の様子がみえるようにガラス瓶で漬けたいという場合でも、2~3か月して大まかな発酵の様子がわかったら甕に移すといいでしょう。
仕込み手順
STEP 1 |キビナゴの鮮度を確認する
仕込む前に、まず個体の状態をチェックします。
最低限確認して欲しいポイントは以下の5つです。
✔ 体全体が銀色にキラキラしている
✔ 側面の青緑と紫の縦縞がくっきりしている
✔ 目が透明で澄んでいる
✔ お腹が膨らんだり破れたりしていない
✔ 開けたときにアンモニア臭がしない
特にお腹が破れている個体が混じっていたら要注意です。
小型魚は消化管の中身が漏れやすく、他の個体にも影響を与えます。
そういう個体は取り除いてから仕込みましょう。
一番大切なのは、その日に水揚げされたキビナゴを使うことです。
キビナゴは傷むのがとても早い魚です。
スーパーでは入手するのがなかなか難しいかもしれません。
鮮魚店や市場で購入する場合も、今朝の水揚げされたものかを確認するのがいいでしょう。
STEP 2|塩水で洗う(キビナゴならではの工程)
キビナゴは小さすぎてエラや内臓を個別に取り出すのが難しいので、その分塩水でしっかり洗うことで表面の菌を減らします。
① はじめに水 1L に塩 30g を溶かして塩水を作ります。(塩分濃度約3%)
② 次にキビナゴを全部入れて 2〜3分静かに漬けます。

③ やさしくゆすって汚れを流します。※こすり洗いは厳禁
④ ①~③の工程をもう一度繰り返し行います。
⑤ 最後にザルに上げてしっかり水を切ります。

なぜ真水じゃなくて塩水なの?
真水で洗うと身に余分な水分が入ってしまいます。
塩水だと浸透圧の関係で水が入りにくく、仕込んだ後の塩分濃度もキープできます。
キビナゴは小さすぎてエラや内臓を個別に取り出すのが難しいので、その分塩水でしっかり洗うことで表面の菌を減らします。
STEP 3|漬け込む
水気を切ったらすぐに漬け込みを開始します。
① 容器の底に塩をひとつかみ振ります。
② キビナゴを平らに並べます。※重ね過ぎない
③ 塩をまんべんなく振ります。
④ ①~③を繰り返して層を重ねます。
⑤ 一番上は塩で厚めに覆います。

注意する点は1つだけです。
それは塩が偏らないように気を付けること。
塩が一箇所に固まってしまうと、塩の薄いところができて腐敗のリスクになります。
全体にむらなく行き渡るよう、各層ごとにしっかり振るようにしましょう。
STEP 4|液面を覆って重石をする
①熊笹か経木で液面全体を覆います。
②押し蓋を乗せます。
③重石をして全体が液中に沈むようにします。
④蓋をして冷暗所で保存します。
熊笹を使うと産膜酵母(白い膜)が出にくくなります。
熊笹には天然の抗菌成分が含まれているので、液面を覆っておくだけで管理がずいぶん楽になります。
熊笹が手に入らない場合は、経木(昔ながらの納豆の梱包材)でも代用できます。
ラップは一時的には有効ですが、長期間保存する場合にはカビが発生しやすく向きません。
STEP 5|仕込み記録をつける
あとで振り返るためにも、必ず記録しておきましょう。
仕込み日:
キビナゴの重量:
塩の量:
副材料:
保管場所:
気づいたこと:
その時は気にならない小さなことでも、後で重要になってくる項目もあります。(特にうまくいかなかった場合)
面倒でも必ず記録するようにします。
⑤ よくある失敗と対策
失敗①|白い膜が液面に張ってきた
原因: 産膜酵母という酵母が増えています。
腐敗ではないのでパニックにならないで大丈夫です。

対策: 膜をスプーンで丁寧に取り除いて、塩をひとつかみ追加します。
そのあと撹拌して液面を密閉します。
空気に触れないことで産膜酵母のさらなる発生を防ぐことができます。
これで多くの場合は落ち着きます。
失敗②|開けるとアンモニア臭や腐敗臭がする
原因: 腐敗菌が増殖している可能性があります。
対策: 臭いが強い場合は残念ながら廃棄が安全です。
改善策としては、
✔ 塩を魚:塩 = 2.5 :1 に増やす(通常は魚:塩= 3 :1 )
✔ より新鮮なキビナゴを使う
✔ 仕込み初期の撹拌を毎日行う
がありますので、次回作るときの参考にしてください。
失敗③|臭いだけで旨味が感じられない
原因: 発酵期間が短すぎる可能性が高いです。
対策: もう少し待ちましょう。
キビナゴの場合は早くて1年、丁寧に作るなら1.5年が目安です。
失敗④|液体が増えない(魚が溶けない)
原因: 撹拌が少ない、または塩が偏っている場合が考えられます。
対策: 週に1回程度、底からしっかりかき混ぜてみてください。
塩が均一に行き渡ると、発酵が進んで液体が増えてきます。
まとめ
キビナゴ魚醤をうまく作る3つのポイント
✔ 当日水揚げの新鮮なキビナゴを選ぶ
鮮度がすべてを決める魚です。目、体の輝き、臭いを必ず確認してください。
✔ 塩水洗浄を忘れずに
エラや内臓を取り出せない分、塩水(3%)で2回洗って菌を減らしておくのが大切です。
✔ 仕込みの初期段階はこまめに撹拌する
最初の1ヶ月は、最低でも3日に1回混ぜるのが腐敗を防ぐために混ぜるようにしましょう。
仕込み自体は10〜15分あれば十分できます。
材料も魚と塩だけと、あれこれ用意する必要はありません。
何となく「魚醤って作るのが難しそう」って敬遠していた方も、キビナゴなら気軽に始められると思います。
発酵の経過、熟成の様子は続きの記事で
仕込んだあとの月ごとの変化(色や香り、味の移り変わりなど)と、漉し方や保存方法については別の記事でくわしくご紹介しています。
▶︎ 【続き】キビナゴ魚醤の発酵経過と完成・漉し方|12ヶ月の記録
→近日公開予定
道具をまとめて紹介します
魚醤作りにおすすめの道具や材料をまとめました。
結果が出るまでに1年以上かかるからこそ、妥協はしたくない。
そんな想いで探したわが家には欠かせないアイテムです。
一度揃えると、毎年仕込むのが楽しみになってきますよ。
▼ 長期熟成には陶器製の甕(かめ)がベスト
おすすめの陶器製の甕(楽天市場)
▼ 一粒食べると納得する、おすすめの天然海塩
未精製の海塩(楽天市場)
▼ 熊笹がみつからなかった時の救世主、昔なつかしい経木
使い勝手抜群の経木(楽天市場)
